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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 生かすか壊すか今の家?リフォームか建替えか?

1 空き家など社会問題に発展する住まいに向き合うために何をするか

建て替え新築はまるで大病に際して大手術をして病巣を取り除き、根治するような気分となり?リフォームはまるで内科的治癒によって治していくかのように思われているのかもしれません。長年住んだ家を触ろうとなると真剣に迷い、考え込んでしまいます。結局、何もしないまま居る人があまりにも多いのです。実際住まいは今、何もしなくても建っているし、家族も使い勝手が悪いままに何とかやっている。今何をしなくともそんな時期やチャンスが巡って来たらやればよい。

そんな時に限って、突然大きな地震が起ったり、本人もあっと言う間に定年を迎え、住宅ローンは借りられず老後の資金も使えず。そうこうしている間にどちらかが具合が悪くなったり、親の介護が必要になったりと、結局何もしないまま住み続け、結果住まい空き家同然となってしまうのです。全国にこうした空き家が多くなっているのはこんな事情からです。

今、全国の各都市の都心部にあるかつて憧れの住宅地に何百万戸の空家が増え続け、その数以上の高齢世帯が空き家予備軍となっているのです。かつての都心の住宅地をドーナッツ状に取り囲むかのように働く若い世帯が張り付き、相変わらず過酷な通勤をしているのです。これはわが家どころか大きな都市問題でもあり、国家的損失の社会問題でもあるのです。私たちの住まいは今、自らの老後不安とともに都市の中での存在を、もう一度根底から考える時が来ているのです。身体と同様、住まいの健康診断、予防診断が必要となっているのです。

イラスト:住まいの健康診断(画:天野彰)
イラスト:住まいの健康診断(画:天野彰)

家を建て替えるかリフォームするか、そのポイントは地盤と家の持ち

そこで今、雨漏りがしたり、大きな地震が来て初めて何かをしようとするのではなく、今あらためてわが家の価値を知り、いま自分が元気なうちに思い切って“大手術”をするか?の住まいの予防医学とも言えるのです。わが身わが暮らしの老いに向けての、家はもとよりその周りを見つめわが人生の行く末を考え、まずどこを補強して、どこを守るかを考えるのです。

確かに今の家を思い切って壊してこじんまりした終の棲家をつくるか?あるいは、一部を壊して減築リフォームにするか、はたまた全体の間取りを大幅にリフォームしてその一部を貸して老い暮らしの糧にでもするか。この答えを出すのはなかなか難しいものです。投げ込みのチラシも何となく不安で、近所の工務店やリフォームの看板を掲げた店に声を掛ければ、近所だけに安心のようだが、反面断ることも難しそう。何よりも家の内部を知られることも気恥ずかしい、などなど。なるほど、肝心の自分たちが何かを決めている訳でもなく、どうしたい訳でもない。ましてそんな予算を用意している訳でもない。ほとんどの人が地震に対して大丈夫か?この先のわが暮らしにどんな暮らしや家が良いかを知りたいだけなのです。

実際にはすでに子どもたちは出て行って、夫も同僚たちを連れて来るような世代でもない。その子世代の若い人たちはと言うと、賃貸から何とか分譲のマンションか、できれば戸建ての持ち家へと、社会のニーズは変わっているのかも知れません。そこで建て替えは諦め、まずは自ら改めてじっとわが家を“見つめ”遠くから、近くから、そして中からわが家の健康診断をすることをおすすめします。ポイントは地盤と家の持ちです。それを持って改めて専門家と相談をするのが賢明です。

イラスト:地盤 場所によって揺れ方が違う(画:天野彰)
イラスト:地盤 場所によって揺れ方が違う(画:天野彰)

2 果たして地震のためにわざわざ家を建て替える必要があるのでしょうか?

国立競技場は壊して建て替える必要はあったのか?なぜ増築リフォームを検討することなくさっさと壊してしまったのだろうか?などと多くの人からの疑念もありました。今あのことで反対もしなかった建築家や大手ゼネコンが大きな信頼を失ったことを彼らは国民の一人として感じているのでしょうか?完成を目指して日々頑張っている巨億の国家プロジェクトの作業に対してだれも目を向けることなく、完成の期待もないのはなぜでしょう。現場に行っても大々的に完成をアピールするどころか、こそこそ目立たないように工事を進めているのはいったいなぜなのか?と多くの市民の声も聞こえてくるほどです。当事者の人々にとってはやりがいのない悲しいことなのですが、すべてが専門家委員会のせいで事を済ませる行政の無責任さに、何を言っても仕方がないと諦めてもいるのでしょうか?

成熟した国家や都市においては累計で数千億ともそれ以上とも言える国家プロジェクトに心ある専門家を選ぶ能力だけはもってほしいものです。

30年持つかどうか分からない家に建て替える前に考えること

何か話が違う方向に行ってしまったようですが、要は「レガシー」などと心地よい謳い文句があるようなオリンピック後の効果的で意義ある成果とはいったい何なのか?改めて考えてみる必要があるのではないかと言うことで。私たちの住む家もまたその通りで、

  • ・今何が不足か
  • ・どこが危険でどこを補修すればよいか
  • ・果たしてその費用はいくら掛るか

を徹底的に検討することなく施工者に壊しましょうと言われてすぐに建替えてしまうのはいったいなぜだろうと言うことです。先人たちが何百年も持たせようとつくって来たレガシーの家をあっさり壊すことは、そして拙速と30年持つかどうかも分からない家に建てることが果たしてわが家いいや、わが国の「レガシー」となるのだろうか?と言うことなのです。

家が建っている位置と地盤を観て、わが家の造りやその痛みを見ることをしていただきたいのです。さらに今後どう生きるかも考えて頂きたいのです。意外にもここでは夫婦別々に考えて頂きたいのです。

写真:阪神大震災の惨状(撮影:天野彰)
阪神大震災の惨状(撮影:天野彰)

3 震災7年後の石巻 まだまだ遠い復興の道のり

もとの港の街の上に膨大な土砂でかさ上げされ、13mの防波堤や川の土手づくりが今も、もくもくとつくられていたのです。道路もすべてがかさ上げされ、窪んだ所にあの何度も放映された悲劇的な防災センターの剥き出しの3階建て鉄骨造の遺構と、その対面に多くの人々を津波から救った4階建ての結婚式場高野会館が取り残されていて、そこにかさ上げされた高台?によって、無情にも雨水の逃げ場を失って水が溜まっているのです。この光景を見て、えも言われぬ不思議な心境となって帰ってきたのです。

写真:防災センターの「遺構」と周りのかさ上げ土地
写真:防災センターの「遺構」と周りのかさ上げ土地(撮影:天野彰)

家ではなく街や村の「生かすか壊すか」を目の当たりにしたような気がしたのです。実際には新設の防波堤より高い15メーター以上の津波に襲われた被災地は海が見えなくなった街となり、中途半端な高さの防波堤を前に地域の人は無言のまま居て、高台にあえて木造で建てられた商店街が異様に静かに建ち、まるで道の駅のように観光客の売店となっているのです。かつての町の界隈性にはほど遠く、見世物小屋的様相に、店主たちは無言で働き、周りの高台の広大な裸の土地がまさに砂漠のようにむなしく荒涼としているのです。

今後この商店街の周りに人々が家を建て、移り住んでくれればと願い、祈るばかりなのです。壊して新たに街つくることの難しさをまざまざと見せつけられ、被災地のまだまだ遠い復興の道のりに呆然としたのです。

頑丈な鉄筋コンクリート造の「高野会館」を生かすことが復興に繋がる

しかもこれが東北の沿岸部各地がすべてこうなっていると思うと、改めて4階建ての鉄筋コンクリート造の高野会館のような頑丈な建物を多く造り、とっさに人々が逃げ込めるようにし、街をもとの地盤のまま極力再現し、局所的に防波壁で囲う考えの方がますますよかったのでは、と感じるのです。あの結婚式場の3階までは津波によって内装は流されたものの、4階のホールに300人ほどを収容し、その命を救ったと言うのです。

写真:15メータ―の津波にも耐え生き残った内部「高野会館」
写真:15メータ―の津波にも耐え生き残った内部「高野会館」(右写真 撮影:武藤英正氏)

その会館の持ち主は、建物はリフォームをして生かせるものの、回りがこうもかさ上げされ、まるで窪地ようになった土地のビルは廃棄し壊すかあるいは多くの津波から命を救った証拠の建物として記念館のように生かすかに戸惑っているようなのです。多くの犠牲者が出た「遺構」と対照的に、かさ上げなどなく景観と生活基盤さえあれば本当に生かせた「記念館」ともなったのです。

写真:防災センターかさ上げで見えない

4 生かすか壊すかを冷静に判断するには

津波などの災害などに対する防災強化などのハードばかりを考えて、慌てて、今までの家や街を捨て、先の見えない高台や防波堤を巨費を投じて造ってしまうことなどと同じことなのです。地元、三陸の人たちにお逢いしお話しして、その実態を見てその決定が何とも拙速で寂しく、重苦しい気持ちになって帰って来たのです。家のリフォームとも同じで、生かすか壊すかを、も少し冷静に見ることが大事なのです。若い世代に向けて『50代から生涯暮らすリフォーム』などと言う仰々しい本を書いていた最中で、50代や60代の人たちの近視的な発想や創意に寄って出来てしまっているのではないだろうかと思えてしまったのです。確かにすでに70代となった筆者にとっては、こうしたギャップを大いに感じており、最近の近視眼的な政策や政界の成り行き同様、今のことしか対処していないことが気になります。それは通勤電車などや道を歩くときに顕著で、ほとんどの人が下をうつむいてスマホに見入り前を見ていないのです。

電車の入り口から左右を見ると座っている人がまるでエビのように全員うつむき猫背になっている光景はまさに壮観で、不気味で誰も前を見ていないのです。

こうも前を見ずにいて将来の姿などが果たして見えるのだろうか?と、肝心の家づくりの現場でもいささか疑問に感じることが多いのです。おりしも全国にあり余るほどの空き家が増えている社会現象と、壊すか生かすかに迷う世代のために、「50代からの」は、これからのわが暮らし、わが国の将来を長期的に見て家を考えて欲しいと願うつもりで書き綴っていたのです。

5 想像を絶する災害に太刀打ちするために必要なものは何か

都市防災ですが、あの阪神大震災が顕著です。まだ正月気分覚めやらなかった1995年の1月17日早朝の全国を震撼とさせた都市中央部直下型地震で、6,500人以上もの犠牲者を出し、だれもが目を疑ったものです。あれからすでに23年の歳月が流れいろいろなことが分かって来たのです。直下型地震の一瞬の圧死を防ぐ耐震強化が叫ばれたことはもとより、犠牲者の2割以上は生存の可能性があったとも言われる用件も判明したのです。冬場であったことからか、被災地に早々に電気を送り、通電火災を起こし焼死者を増やした可能性。さらには救助や消火活動を阻んだ、安否確認や帰宅のための渋滞など、ソフト面での対処に不備があったと言われているのです。

その後も各地に数々の地震や災害が襲い、巨大津波の東日本大震災となったのです。地震や台風に勝つ要塞のような堅固な都市や家がまずは望まれるところでしょうが、実際には想像を絶する強風や揺れや津波も起こり得るのです。ハードばかりでなくソフト減災の配慮が欠かせないです。

すでに23年を経た阪神大震災で、初めて体験した揺れもまさに想像を絶するもので、家が飛び跳ねるように倒壊し、3センチ以上の太さの鉄筋や、厚さ3センチ以上の鉄骨コラムがスパッとぶち切れるような破壊など、私自身もそれまで立ち会った破断試験などではとうてい信じられない、爆発の圧力のような応力が掛ったと思われるのです。

古い木造住宅に学ぶ、ちょっとの耐震強化が家や家族を救う

それでも幸いにもかろうじて倒壊を免れた家も多いことも分かったのです。しかもそれが必ずしも堅固な新築ではなく、倒れ掛かった古い家に丸太でつっかいをしただけの家が助かり、傾いても倒れなかった家の住民が助かっているのです。揺れに身を任せる制震や免震などで、さらに進化しているようで、改めて古来木組みの木造の柱梁の仕口を楔(くさび)結合の柔軟性なども改めて見直され、省エネルギーや自足自給の自然の家へ進化しているのです。

この30年内に7,80%起こると言われる南海大地震によって、その瞬間の被害額は優に100兆円を超し、経済損失は10年、20年間に1,300兆円を超すなどと言う。まさに「日本沈没」のような恐るべき試算が発表されたのです。それで慄いていてはいざと云う時家族を守ることはできないのです。今の住まいを、リフォームでちょっとした知恵で耐震強化さえすればそうした地震にも勝て、伝統あるわが家も転ばず街を守れるかもしれません。

その秘伝とは?ちょっと大袈裟ですが、「支え!突っ張り!抱く!」のです。今の建物のままで、内装や外側に頬づえなどで支え、つっかい棒で突っ張り、弱い梁や柱をもう一本か、二本の梁や柱で抱くように補強!まさにこの三手に加え、直接力を受けないでやり過ごす、あの一手も加わる相撲の手のようですが、その方法は、イラストをとくとご覧あれ。

方杖で支える山小屋リビング?(画:天野彰)
イラスト:方杖で支える山小屋リビング?(画:天野彰)

ノアの箱舟?架台や客家の様な囲いで津波をやり過ごす(画:天野彰)
イラスト:ノアの箱舟?架台や客家の様な囲いで津波をやり過ごす(画:天野彰)

「あきらめる」ではなく、日頃の心がけで災害は変わる

長年家づくりに関わって来て、特に耐震・耐火など防災に心がけて来たのですが、便利で人が集まりやすい都市の平野部の活断層やあの巨大津波には愕き途方に暮れたものです。どんなに快適で住みやすい家も大地震であえなく倒れ密集しているだけに隣家から延焼してしまっては、家はおろか命を失うことにもなりかねません。また今回の大阪北部の震源は熊本のように繰り返しの余震や、液状化も心配です。何よりも大都市では人身被害もさることながらライフラインが停まることです。これにより多くの企業が停止し産業が落ち込み、多くの被害が長く続きます。
なによりも熊本地震やあの東日本の大地震にしてもかつての阪神・淡路地震にしてもあの恐怖の揺れの体験と、長く続く余震による避難生活の不安や不自由さ、そしてその建て替えや修復予算の多額の出費を迫られ、ついにはその街と家を捨てた人も多いのです。

しかし東京をはじめ、大阪、名古屋などの大都市圏の人々は幸いにも多少のライフラインの停止を経験しているものの、そんな各地の惨状をテレビで目の当たりにしながらも相変わらず、あれは“対岸の火事”か?あるいはもしあのような地震が来たら、あきらめるしかないなどと開き直っている人も多いのです。が、とんでもありません。防災、減災はそこに住む人の心がけ次第ちょっとした工夫とわずかな費用で今の住まいを安全で耐震補強でき、家族や市民の命を守ることができるのです。あの悲劇的なコンクリートブロック塀がそれです。これはどの町にも、どの工作物にも言えるのです。日ごろの心さえあればちょっとの見回り、少額の予算で可能なのです。

市町村で危険な箇所を事前にチェックする

そこでわが家が建っている街やその位置、そしてその地盤がどの部分に相当するかを知ることも大切なのです。その方法は、各市町村にあるハザードマップ、さらには海抜を示した地形図を入手し、新興宅地であれば申請に使った造成図を見せてもらうか、担当した施工者に問い合わせることが手っ取り早いのです。造成が古い宅地の場合ではその団地や敷地周辺を散歩しながら、やや離れた対面の高台などから眺めて見ますと、もとの山(地山)や原野の成りがおぼろげながら見えてわが家が削られたところか土盛りされたところかなどが分かります。

地盤によって揺れ方が違う
イラスト:地盤によって揺れ方が違う(画:天野彰)

難しい地盤も、構造も家族と散歩で避難経路の確認し、周辺の道路のひび割れを探し、危なそうな電柱や歩道橋など市民側から問い合わせをするのです。こうして家族も通学はもとより避難経路となるところの塀や歩道橋などの安心もでき、市町村も無駄な費用を掛けず、ピンポイントで調査修正が可能となるのです。こうした聞き取りによる新たな官民国の防災システムで、都市圏では幹線や高架道さらには水道経路などの不備も知ることができるのです。

2018年5月31日(木)発行
『50代から生涯暮らすリフォーム』
天野彰・天野彰人共著、KADOKAWA 価格(本体1,500円+税)

写真:「50代から生涯暮らすリフォーム」:共著/天野彰・天野彰人

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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