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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 消費税論議に住宅屋は怒る!ますます遅れる被災地の復興

1 大震災と津波に勝つ家と街にするために

被災地の人々には長く辛い1年でしたが、もうあれからあの大震災から1年が過ぎ去ろうとしています。この1年で私たちに何ができたのだろ言うかと思うと悲しくなります。被災地はがれきは片づけられたものの集められただけで人々の平生の暮らしなど一体いつのことかと思うほど悲惨な有り様なのです。今も思うと既に40年以上が過ぎ去ったあの大阪万博であるパビリオンの設計から施工のお手伝いをしていたことを思い出します。

東日本の被災地現況
東日本の被災地現況(写真天野彰)

2 総力をあげれば権利の統一が必ずできる

あのオープニングが1970年の3月15日で、まさしくプレスビューがこの3月11,12日頃で寒かったことを覚えています。しかしその一年前と言えば会場予定地は竹藪でまさしく掘り返されたばかりでした、誰もがその一年後に世界の人を呼び集めあの祭典の会場を作り上げることができるのかと不安にかられたものです。ところが実際にその年になると一斉にパビリオンが建てられ出しアクセスを始め、場内のインフラ整備が着々と整い、さらには各展示物など日本全国が、いや世界にまで力を借りて総力を挙げ、一つの目標の巨大な街が出来上がり、見事立派な開催を行うことができたのです。

その経験と力がありながらなぜ未だにあのままなのかと、現地に赴くと目を疑うばかりです。確かにその理由はと言えば、またあの津波が来るかもしれないと言うことですが、では山の上に新天地を開発するとか、あるいは生活は海沿いでなければとか、どちらのケースにも反対者がいるなどです。

では、阪神淡路震災の復興であの絶望と思われた壊れたマンションの建て替えの通り、今度は住人のそれぞれの希望を聞いて費用を賄えばこれもそれぞれの家庭の事情、そして資金力、さらにはこの先を考えた年齢など、土地や占有面積の権利とは違った新たな意味での“総合的な権利”が主張されて無闇に時間ばかりが過ぎ去ったのです。

3 信頼できるリーダーとプロデューサーが必要

新たな意味での“総合的な権利”とは一体何かを考えると意外なことに気がつくのです。それこそ人は皆勝手に権利を主張することです。その権利は人それぞれで、短絡的に土地価額だとか占有面積比率かだけではありません。もちろんそれはのちの実行の際の分配の基準にはなりますが、ことにスタートする決定の要素ではないのです。これは家づくりでの家族の主張と似ています。

もっと言えば家族が公平であればある程それぞれが権利を主張し、なかなか統一案が出せないのです。反対にワンマンなオヤジのいる家ではその統一は瞬時に図られ、決定が早く行われるのです。しかしこれは公平ではありません。後に誰かが大きく不満を持つことになるのです。

そうです。この“ワンマン”を立てて、かつ他の家族の要望をそれぞれに聞きながらいかに設計を推し進めるかが大切です。しかも各家族それぞれの権利の精査と同時に予算、さらにはその将来性をプロデュースするのです。つまりはそのことをその家のオヤジであるリーダーに伝えそれをサポートするのです。

必ず成就すると言う覚悟と意識を持つことです。ではそのプロデューサーはどういう仕事をするかですが、それこそこの家づくりの完成がいかに素晴らしくまたみんなが満足できるものだと信じることです。まるでリーダーのようですが違います。ワンマンのオヤジ、あるいはそういう人を仕立てあげて、まずその人にその夢を持って貰うのです。その人が完成のイメージとタイムテーブルさえ描き持ってくれれば必ず大きく前進するはずです。不思議なものでこのまず一歩の進展が始まると多くの人々の完成と思考は動き出し、自らの権利の主張を皆と統一しようとするようになってくるのです。つまり家族はその家の完成をイメージし、人々はマンションの再建をイメージします。さらに被災地では新しい街のイメージを意識するのです。すると、それぞれの個人差を自らが調整しようと努力するようになるのです。

取りあえず空中に住む案(R&R展より)
(R&R展より):取りあえず空中に住む案(大西隆史)

4 公平とは、すべての人に主張の逃げ道をつくる

もちろんここにはあらかじめ得られた情報をもとに想定されるあらゆる“権利の逃げ道”を用意することが大切なのです。阪神でのマンションの建て替えではやむなくその権利を放棄(売買)して別に移る人、さらには予算の負担を減らし家を小さくする。その反対に二戸分の権利を得て一戸を貸して今後のローンの支払いと生活をする・・・などなど、つまりこうした家づくりでも、マンションづくりでも、さらには街づくりでも、完成し幸せを勝ち取るという意識を共有することで、それぞれが協力する気分になれる各自の逃げ場、あるいは特殊性を考えるのです。誰にでも公平と言うことはこうしたバランスを持てることです。

いざの時に逃げ込む中国永定の客家のようなコロニー(R&R展より)
いざの時に逃げ込む中国永定の客家のようなコロニー(天野英治・天野彰)

例を上げれば山側か海沿いに住むか、あるいはその両方か、さらには戸建てか共同住宅(店)か、を自由に選択できるようにすることなどが大切なのです。これこそプロデュースの極みです。これは複雑な住まいのリフォーム、さらには家づくりにも同じことが言えるのです。またそうした作業を地道に進められるプロデューサーたる建築家が必要となるのです。

津波避難橋梁のようなスカイシップ(R&R展より)
津波避難橋梁のようなスカイシップ(天野彰)

5 復興そっちのけの消費税論議に住宅屋は怒る!

このコラムで政治的なお話をするつもりはありませんが、住まいは世の中の動向や経済に直結しています。今、その最大の懸念は消費税アップの兆しです。その中でもっとも疑問を持つことは、私たちの基本的な福祉政策で、かつて何の議論もなく住宅に5%もの消費税を掛けてしまったことではないでしょうか?今それを10%にしようと言うのです。しかも悲しむべきはそのことを含め、政権与党はおろか野党でさえ「消費税は住宅と医療など福祉関連施設は除外すべきだ」と異議を唱える発言が聞こえても来ないことです。

今こそ社会や国のあらゆる無駄を無くして国家の危機を救うべきときに、増税で、しかも消費税アップで解決しようと言う短絡的な考え方が問題です。しかも今さら年金福祉の改革などと、もともと20数年前当時の人口動態を見れば、少子高齢化どころか年金や医療保険が危機の“老いの国”になることは誰もが分かっていたにも関わらず、具体的な準備や方策も無く、そればどころかバブル期に蓄積されたはずの巨額の年金資金も、リスキーな投融資の放任や、国民休暇村建設や放漫運営などで何処へ行ってしまったか、またその原因や責任の所在さえも分からないのです。

6 消費税アップでますます遅れる被災地の復興

そんなおりもおり、震災後一年が経ってもいまだに生活の場もなくそこに住む家もその構想も持てず、その兆しさえもない中、やりきれない思いで仮設住宅生活を送っておられる多くの被災者の皆さんのことを思うと、今改めて快適な住まいの重要性と、その家が持つ福祉の価値を思い知らされます。

被災地の写真1被災地の写真2
左写真:被災地の写真1(写真天野彰)右写真:被災地の写真2(写真天野彰)

住まいとは、“生活の場”です。その生活とは働くことです。人間にとって働く場所の近くで寝泊まりができ、家族が身を寄せて暮らせることが一番の幸せです。その生活の場づくりができていないのです。また津波の危険をさけて高台移転などや、街全体の計画をしてからとかで建築制限を掛けているのです。その為住めそうな家やビルもリフォームさえできずにいるのです。

今何より急ぐべきは、こうした生活の拠点となるべく働く場所をいかに整備するかです。生活の場である農地や漁港、そして加工場や店舗などができると、それぞれの住居群ができてくるのです。前回お話ししたように、今の農地に安全に住むために15ートル以上もの客家の城塞を思わせる防潮堤の集落をスポット的につくることや、緊急避難施設ともなる橋梁のような集合住宅や人口土地などを各地域に造ることです。

橋梁のようなS字型の集合住宅の案
橋梁のようなS字型の集合住宅の案(天野彰)

こうして今すぐにでも働く場所に仮設ではない恒久的な住まいを“創る”ことこそがプロデューサーたる今の政府の務めなのです。すでに電力会社などは原発始動の為にさっそく巨額を掛けて防潮堤を造り始めていることです。

いまだ被災されて苦労されている多くの人や、ご遺族方の心中はいかなるものか、話題にも上がらないのです。この微妙な時期に多くの国会議員が、なぜか長年放置してきた社会保障のための消費税議論を今、しているのです。考えてみれば当初は確かこの大災害復興のための復興税のはずだったのです。どう観てもそのことにかこつけた増税としか思えないのです。これにより消費は低迷し、景気はさらに勢いを失い、復興の意欲をも喪失しかねないのです。

既に上がり始めた建材などで工事費は上がり、しかも消費税の為に物価が上がり建築コストも大幅に上がり、それが復興の足かせとなることが目に見えているのです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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