住宅関連記事・ノウハウ
わくわくする色っぽい四畳半?!~老いない四畳半?と小上がり空間の妙!
1 わくわくする色っぽい四畳半?!
かつては時の流れがゆったりとしていて、医療や栄養などの未発達のために寿命こそ短かったものの・・・人々は人生を十分にまっとうできていたのではないかと思うのです。しかもこの変化はつい最近のことで、私が子どものころの時間を思うともっとゆったりと流れていて一日一日がとても長く、そして一時一時を充実して過ごしていたように思えるのです。
今誰もが80歳を超える長寿となり、しかも元気で友だちとのアウトドアの楽しみはもとより、そのほとんどが住まいにおいて日柄テレビと過ごすだけと言うのです。せっかくの寿命をただ生きながらえればいいものではありません。ましてや寝たきりの生活などできればしたくありません。生をどう“活きる”べきか、どう楽しむか?今その“暮らし方”を改めて考える時代が来たのかも知れません。
私の大好きな言葉に、浅酌低唱(せんしゃくていしょう)なる粋な言葉があります。浮世を離れ川のせせらぎの音でも愉しみながら「軽く一杯で鼻歌」の気分です。浮世を離れる程でもなく、忙しい毎日の一瞬でもこうしたゆったりとした時間を過ごすことがとても大切だと思うのです。
2 狭さを楽しむ「狭“楽”しさ」の発想
そんなわが家での浅酌低唱の空間と言うと、方丈記で知られた一丈四方の方丈庵のような、今で言う「四畳半」の“人間的”広さを思い浮かべます。四畳半を人間的と感じるのは私だけなのかも知れませんが、私はもともと狭い空間が好きで、狭苦しさをあえて広くするのではなく、狭さはそのままであれこれ工夫して“苦”を取り去って“楽”にし、さらに狭さを楽しむ「狭“楽”しさ」の発想とし、それを論じて多くの本も著しました。
狭楽しさ発想の拙著(天野彰)
人間的サイズの「四畳半」はいろいろな生活のシーンとその息づかいが聞こえるほどのまとまりやすさから色っぽくて刺激的な空間となるのです。
健康住宅『家ッグ』の室内展示四畳半のプラン 『家ッグ』での四畳半提案とせせらぎの映像(天野彰)
実際の設計活動でも、住まいづくりに限らず高額な土地を生かして、病院や福祉施設、さらには工場などをコンパクトで作業性がよく、さらには省エネになるなど、“狭さを生かす”工夫で多くの建物を設計してきたのです。建て主もこの工夫をともに考えることで若々しくはつらつとなるから不思議です。
N様邸 ステージのような小上がりの和空間
3 小上がりの四畳半は家族の団らんと老いのベッド?
四畳半はなんとも不思議な空間です。四畳半の真ん中に卓袱台(ちゃぶだい)や炬燵(こたつ)を置くと、これがまたなんともバランスがよくしっくりとした空間となるのです。ここに家族4人が座れば楽しい団らんの茶の間となり、親しい仲間とのマージャンの場にもなります。さらに互いがその角に鎮座し「おひとついかが?」とくれば、これこそ色っぽい「四畳半文学」を地で行くこととなります。
わが国にはこうした狭さの妙を追求した奥深い空間の哲学があり、茶の湯の高い精神性となり、その反面無駄に広い空間をあえて「・・・の千畳敷」などと疎む感覚もあるほどなのです。
小上がりの畳の下は巨大な引出し収納・Nar様邸(天野彰)
そんなことからか、私の設計する家には小上がりの和室の空間が多いのです。なぜ小上がりかと言えば、まさしくリビングダイニングの「洋の空間」と「和の空間」の境目であり、和洋インテリアデザインの切れ目でもあるのですが・・・、実は本当はスリッパがスッと和室に滑り込まないようにすることと、その段差の下に奥行きの長い引出し収納ができて大量の物が収まるメリットもあるからです。さらにこの小上がりの段差はリビングとの境においてはちょっとしたベンチとなり、多くの人も腰かけることができ、家族の団らんはもとよりホームパーティなどの一つのシーンとなるのです。
小上がりの畳空間とベッドとのプランとその断面 小上がりとベッドの段差を利用したシーツの交換(画:天野彰)
そして極めつけは、この小上がりの段差が老いて生活のしやすい療養室ともなるのです。リビングダイニングに沿った四畳半はイラストのように、療養のベッドと併用して夫婦の寝室ともなり、シーツの交換もしやすく、しかもいつも家族と近いところに居られて疎外感もなく、ベッドの高さ同様、この小上がりの四畳半から足を降ろせばすっと立ててトイレにも行きやすく、まさにおいて足腰を鍛えるリハビリテーションともなるのです。
老人施設ミオファミリアのラウンジの小上がりの四畳半(天野彰)
関連記事
おすすめ特集
人気のある家をテーマ別にご紹介する特集記事です。建てる際のポイントや、知っておきたい注意点など、情報満載!