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建築家 天野 彰 老いの居場所 同居か独居?自在プラン~ライフステージに合わせたプランづくり

1 老いの居場所 同居か独居?

長い人生のこの先の自分とその家族を考えると、今の生活のプランがはたして老いの自分を“救ってくれるか?”が重要となってきます。子どもたちと同居するか独居するか?など大きなわが家の予測をし、どちらの間取りとなっても行けそうな“今のプラン”を並行して考え、快適な老いの暮らしの居場所を想定するのです。今と未来を並行して間取り考えるとはとても難しそうなのですが、

  • 1 まずは間取りを将来変換しやすいように、いかにシンプルな間取りと構造にしておくこと。
  • 2 その自由な内容を包み込むようなゆったりとした外観 今の間取りのための融通性のないデザインに凝らないこと。
  • 3 その可能性のある設備配管を考え、最低でも配管だけを埋め込んでおくなどです。

以上の3点を基本に家本体のボリュームや構造を考えて躯体をつくるのです。誰もが望むことは、せっかく手に入れた自分の家で人生をまっとうできることではないでしょうか?まさに最期まで住める家こそが理想の“いい家”と言えます。

老後に自在の「二世帯“含み”住宅」プラン例,今無理してでも大空間の「体育館住宅」を
左・将来変更可能『二世帯”含み”住宅』プラン 右・吹き抜けの「体育館住宅」(画:天野彰)

今まで多くの家族が住む家づくりやリフォームのお手伝いをして来てつくづく思う事は、どんなに豪華でモダンな家であろうと、あっと言う間に子どもたちは育って夫婦二人だけか残された母親だけの暮らしとなり広過ぎ使いにくく住みにくくなっている家が多いのです。こんな時まさしく「同居」がその家を活性化出来ることが幸せだったと思うのです。次回以降はそんな親の本音と、もちろん子どもたちの同居思考の本音に迫ろうと思うのですが、実際にその間取りの変換の可能性を持ったプランニングと家の形とは?

イラストの間取りのように、あらかじめ階段を外から2階に直接上がれる玄関を持った階段にしておいて内側のドアAを閉めれば二世帯住宅や人にも貸せるアパートに変更が可能なのです。その際に2階のクロゼットを水回り(すでに埋め込み配管があり)としたり、あらかじめ吹き抜けにしておいた2階部分に床を張り増築、いや増スペースもできるのです。
 私はこの階段を持った間取りを「二世帯“含み”プラン」と名付け、さらに2階まで吹き抜けにした家を「体育館住宅」と名付けてライフステージの舞台づくりに役立てているのです。

2 同居、親の本音と子の本音 上手な二世帯同居プランづくり

同居のプランづくりは難しいのです。なぜなら同居の真意あるいはその本意を探りながらの試行錯誤となるからなのです。真意と本意など、まるで同じ意味合いの言葉のように思えるのですが、ところがどっこい、こと同居住宅の設計となるとこの両者には微妙な相違点が現われて来るのです。まず同居に対する親の本音と子どもたちの同居思考の本音のそれぞれの真意があり、それこそ親の老後不安と子の庭付き戸建て願望があり、さらにそれらをいかに効率よく結びつけ組み立てて行くかと言う、同居の本意とがあるのです。つまりそれぞれの真意は想像の通りで、互いに異なる同居のメリットを探ってわが身わが暮らしのこれからと今の得を考えることなのです。これはその土地の有効利用と言う点でもきわめて当然のことで、その本意とは、これからの時代、社会保障の行方や医療費などの高負担がかさむであろうことと、そんな中での高齢者施設やケアの質の不安を払拭できないことです。同居はその土地の有効利用のみならず身内と共存すると言う点できわめて意味があることなのです。

反面、同居は依然として嫁姑問題があり、それが同居不安ともなっているのです。が、実際は封建社会での先入観念であって、現代は嫁姑の互いが気を遣い過ぎることが同居不安の要因となっているのです。そこで同じ屋根の下に親子が別々に住む「二世帯住宅」となるのですが、しかしこれは例え玄関を別々にしても普段から互いが交流を密にしていない限り、意識が通い合って、かえって近すぎるがゆえに住みにくくなるのです。こうして二世帯住宅に失敗したと言う親子夫婦は多いのです。その丁度良い距離関係こそ、住まいやすい同居プランなのです。

同居の形
左:お馴染み同居の距離パターン図 右:同居の形(断面)(画:天野彰)

3 息子とは「べったり同居」娘とは「二世帯住宅」?!

今まで核家族で悠々自適に住んできた親子が、親の高齢化に伴い、東日本大震災などの経験から、お互いが離れて住んでいる不安と、子夫婦が子育てで手狭になるなど同居希望はますます増えています。加えて親の年金の目減りや医療費の負担増、さらには施設の快適性が疑問視もされて在宅介護、すなわち老々介護などと、「本音」では親たちに肉親の同居の希望や願望があるのです。

しかし同時に今まで勝手気ままに核家族で暮らしてきた親夫婦の方が同居に不安を抱いている真意があるのです。その真意からは親子一体の“べったり同居”は昔と違って親夫婦が子夫婦に気を遣って、結局一、二階に分けて勝手気ままに住める二世帯住宅が良いとなることが多いのですが・・・しかし二世帯住宅はあくまで二世帯が住む家で同居住宅ではないのです。運悪く母と嫁の反りが悪かったり、いったん何か諍いでもあると嫁は親の家に行きにくくなってわが家に籠ってしまいます。両者が同じ屋根の下で近過ぎるためにかえって暮らしにくく、皮肉にも疎遠になってしまうこともあるのです。

そこで私は、息子夫婦同居は極力べったりの同居が良く、娘夫婦とは逆にきっちりと分けた二世帯住宅にすることをお勧めしているのです。いったいなぜ?と思われるかも知れませんが、同居はどんなプランにせよ親子が一つ敷地の一つの屋根の下で鼻を突き合わせて住むことになります。たとえ玄関を別々にしても、音も声も聞こえ、孫も行き交い、親子が目を合わす機会も多くなって他人のように“勝手”には住めないからです。これはスープの冷めない距離でも同じことが言えます。近くに住みながらスープどころか顔も見せないなど、かえって心配したり気を遣うことになるのです。そこでもし父親が病に倒れたり、亡くなりでもしたら母親の疎外感はさらにいっそう増すことになりかねません。

プライバシーのあるべったり同居の間取り図
プライバシ―のあるべったり同居プラン(画:天野彰)

これに対し、互いのプライバシーの確保に努め、リビングを互いの緩衝ゾーンとしつつ嫁姑がべったり同居すると多少の諍いがあっても一緒に暮らしているだけに解決が早く、そればかりか義母からいろいろ学ぶことも多く、孫たちにも半世紀におよぶ生きた情報やマナーが伝えられるのです。特に共働きの若い夫婦は子ども預けて安心して働けます。これこそが親子の役割が発揮できて、生産性も高い「同居」となるのです。反対に娘同居は放っておいても、気ままな“べったり” 同居となり、互いが楽のように思えますが、その反面、母娘互いが依存し過ぎて、娘の夫である婿の存在とプライバシーがぞんざいにされがちになりかねません。そこで意外にも、娘同居はあえてドアが別々の「二世帯」に分けた方がそれぞれの生活に“歯どめ”が効いて夫婦互いの自立となり、しかも母と娘だけに別々に住んでいてもまったく疎遠にならないのです。

4 親子同居さらにその親との「四世同堂」の家

四世同堂は鶴は千年、亀は万年のめでたいこと

今のわが人生を基軸にした住まいの時計の外側にはわが子さらに孫の時計が回り、そこで若いころの新築の際や、今は夫婦だけの建て替えでも同居を想定内として住まいのプランを考えるのです。むろん子どもが成長するまでは家族で使うのですが、その後は水回りを加えるだけで二世帯が住めるように、互いが分離したり、あるいは一体同居にしたりするようにプランを考えるのです。二世帯に分離できることは子との同居に限らず、いざとなれば玄関と階段を区切って人に貸すことも前提とするのです。

最近はさらに長寿で親夫婦はもとより祖父母も元気で、三世代どころか四世代が一緒に住む例も多い。これを中国の故事で四世同堂と言い、まさに鶴は千年亀は万年」のようにめでたいことなのです。親子がせっかく一緒に住むなら、経済的なメリットだけではなく、一緒に暮らす安心感と世代の違う夫婦が互いに学び助け合う価値観を見出したいものです。

親子孫時計
孫子そして親の人生も回る時計(画:天野彰)

同居のプランは1万通りもある!?

とは言え同居の住まいの設計は難しく、なかなか完璧なプランはできません。一つの家族が住むだけの家の設計でさえ夫婦双方が満足する家にはならないのです。なぜなら何度もお話しするように“夫婦は決して1つではない”からです。家づくりでは夫と妻の希望がそれぞれ10通りずつあれば、夫婦で10×10=100で、なんと100通りのプランができるのです。これが親子夫婦の同居となると親、子それぞれに100通り!なんと、100×100 の1万通りのプラン!が生まれることになるのです。実際にはそれほどのプランをつくることは不可能ですが、同じ家族の希望でも意見の強弱によってなんとまったく違ったプランになってしまうのです。親子夫婦4人が意見や希望を強く際限なく言い出すと全員の要望に合ったプランなど出来ようはずがないのです。そこで早計「二世帯住宅」となるのです。が、互いが勝手に自由に暮らせる反面、父親を亡くしたり、経済のバランスが崩れた瞬間に、別々に暮らして来たために互いの思惑と理解が分からず、かえって不自由になることも多いのです。

親子孫その親同居住宅
親子孫さらに祖父母も住む家イメージ(天野彰)

5 そして改めて積極的 同居共働住宅

今、高齢者が増え続けるなか、年金不安や介護保険の将来性などを考えると、実にやるせない老いの生活の不安がよぎるのですが、老人保健施設や老人ホームなどの施設も、それ以上に老人が多くなって入所できるかどうかも分かりません。その介護の質の不安はもとより費用もさらに多くかかるかも知れません。

一方子の側は、働きに出たいが保育施設の確保やその育児、さらに高学年となるとアフタースクールの鍵っ子となる子どものことが心配です。しかも一人っ子で結婚した子夫婦は、老夫婦だけで住んでいる双方の両親のことがなんとも気がかりです。確かに親夫婦にとってはいずれ介護が必要となっても、安心してわが家で暮らせ、子夫婦も在宅育児と親夫婦の在宅介護など、社会支援を受けながらも身内による安心な子育てと老後の生活がなによりです。

そんなことからか今にわかに同居に関心が集まっているのです。特に3・11の大震災直後から親子の双方から同居希望が増えているのです。核家族が進んで今まで別々に住んできた親子までが、互いが離れて住んでいることの不安を持つことと、子どもの成長にともなって家が手狭になった、などが原因とも言えますが、親たちは本音では同居の願望?があっても、今まで勝手気ままな核家族の暮らしに慣れて来たために子どもたちとの同居に不安を抱いているようです。

将来のわが家、中庭吹き抜けのある住まい
将来の同居スペース[O様邸] 写真:将来の空間を持った新居浜I邸完成(画:天野彰)

私はこうした本質的な現代の社会現象が抱える問題と次世代の育児に対して“積極的な同居”を勧めています。同居のありうる親子間の影の部分を認めながらも、2組の夫婦があえて一緒に暮らす住まいこそ活動的で生産的な同居住宅です。子育てをしながらも共働きで忙しい子夫婦と、それをサポートする親夫婦との共同生活、いやもっと共働の生活となるのです。私はこれを「同居 共働 住宅」と名付けて、少子高齢化社会の生産的かつ積極的な現代版同居住宅として、親子のはつらつとしたチームワークの新しい同居スタイルを提案しているのです。

親の人生の頂点を80歳すなわち12時の位置としますと、子ども夫婦の時計は親の30歳前後からのスタートとなります。この互いの時間が親子そして孫の時計となり、これに沿って家が対応するプランニングが理想的なのです。しかも現代は超長寿社会でこの家族の時計の中で、なんともう一つの時計、そうです親の親、すなわち祖父母の時計も回っているのです。親すなわち自分が60前後のとき90歳前後の高齢の親がまだ居て“四世同堂”の家と言うことになるのです。

6 同居の密度で親子の最適同居とは?

同居と言えば古来「三世代同居」と、親子そして孫が一つの家に一緒に暮らすのがあたり前のことでした。それがなぜか核家族化が進み親子が別々に住む二世帯住宅などと言うスタイルとなっているのです。

いったいなぜそんなことになったのかと言うと、一部の鉄筋コンクリート製の家を除き木造の家が一般的であった住まいが、ある輸入建材によって鉄骨造の外壁に軽量発泡コンクリートすなわちALC板を張ることにしてなんとなく鉄筋コンクリートのような家が可能となり、まさしく1、2階を別の世帯、2世帯に分けて住めそうと言うことからでした。当初はまるで事務所のような四角い箱のよう家でなんの変哲もない家でしたが、これに外階段を付け、二つの玄関を設けさらに庇を突きだして屋根のようにすると何となく家らしくなり、親子二世帯が一つ屋根の下で分けて住めそうなどと、今までの同居住宅の不自由な点をいろいろ探り出し、親子が勝手気ままに住める二世帯住宅と言うことで一挙に話題になったのです。おかげで親子の同居の本来の良さは失われたものの、逆に子育てを巡り互いが干渉しあうなどや、生活時間のずれなどの煩わしさから解放されたのです。一方でこの隔離によって互いがクールとなり、ややもすると、無関心となり過ぎて子ども、すなわち孫はせっかく同じ屋根の下で祖父母と暮らしているのにも係らずその恩恵をこうむることもなく、さらにいずれ親の側が夫を失ったりでもすると母親は孤立し、疑心暗鬼となることもあって積極的な交流も必要となるのです。

しかし突如一体同居でべったりと同居することは互いが慣れていないことと、現代は時代が変わって嫁いびりどころか親が子夫婦にいろいろ気を遣って疲れてしまうことが多いのです。

結局親子が1、2階に分けて勝手気ままに住める「二世帯住宅らしさ」を生かしつつイラストのように寝室や台所(キッチン)などを極力離して互いのプライバシーを守り、逆に互いのリビングやダイニングルームを近づけ、そこは一体にし、一体同居のプランに近づけることが良さそうです。

矢印左右が同居の濃さ
同居の濃度とそのパターン(画:天野彰)

私は息子夫婦、すなわち嫁と同居するなら最初から思い切ってイラストの左寄りの「べったり同居」が良く、反対に依存し過ぎる娘夫婦との同居はあえてきっちりと分けた右寄りの「二世帯住宅」が良いと思うのですが、皆さんはいかがお思いでしょうか?

天野彰著書『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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