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建築家 天野 彰 寝室は別か一緒か? ~夫婦の寝室

1 寝室は別か一緒か?夫婦の寝室

住まいづくりを担当する建築士として困るのはリビングでもなくキッチンでもなく「夫婦の寝室」なのです。リビングやキッチンなどは最初から話題となって夫妻があれこれ要望や意見を出し、大方のイメージがつかめるのですが、この寝室に限ってはこちらから赤裸々に聞きにくく、肝心の建主からも特別な要望もないのです。そこで支障なきようツインベッドを置いてMBまたは「夫婦寝室」などと記して設計を進めて、間取りができ上がってしまうのです。ところが設計の最終段階となってなぜか奥さんが怪訝な顔をされ、釈然とされないことが多いのです。「なんだ? どうした?」などとご主人が聞いてもはっきりとしないこれ以上作業が滞るのもいけないと観念しておっしゃるのが私の部屋です。なんだ私の部屋とは?とはご主人。

当のご主人は「む……」と声が出ない。

聞けばその理由のほとんどは早寝早起きと異なる生活パターンの夫婦の時差と、消したり着けたりのクーラー戦争の温度差で、さらに若い頃は気にならなかった互いのいびきや歯ぎしりなどの騒音だと言うのです。

ならばプランニングの最初からあえてどう寝ていらっしゃるかを突っ込んで聞けば良かったのですが、なかなか夫婦のプライベートな生活にまで立ち入れません。そこで、あえてこの聞きにくいアンケートを拙著のプレゼントを条件に行ってみたのです。本を送るため住所氏名記載がゆえに、あまり赤裸々な質問もできませんでしたが・・

集計の調査結果

夫婦別室は少なくて17%で、同室が77%でした。まさに夫婦の年齢層がお若いことからでしょうが、50歳代になると同室はたちまち50~60%と少なくなり、別の階での別寝室も多くなっているようでした。

過去にある紙面サイトにて行った夫婦の寝室一緒?別々?その理由は?で、アンケートの一例として、しかも現在はどうか、そして将来家を建てるときはいかが?と聞いたものです。その集計結果が・・・、男性の今の状況は33%、つまり3人に1人は別々の部屋で寝ていて、今後も37%は独り寝が良い!で、これに対して女性は現在27%ながら、この先は40%以上が”独り寝”が良い!と思っているようでした。

これは大変です。今隣で寝ている奥さんはホンネでは別がよいと思っているのです。

理由

  • 「毎日自分の帰宅が遅い、妻への思いやり?(40代男性)」
  • とけなげな優しさで、その妻は「夫のいびきがうるさい、就寝時間も違う(40代女性)」が一般的。
  • 「気を使わないですむ(50代男性)」
  • 「自分の時間が持てる(50代女性)」
  • 「主人がエアコンをきかせ過ぎる (30代女性) 」
  • 「寒暖の差 (40代女性)」などとクーラーのせいにした“温度差”でした。

しかし別室となったきっかけでシリアスな理由で、「子どもの授乳や夜泣きに『うるさい』と言われて以来 (現在50代女性)」であったり、その反対に、「My wife likes to watch TV in her bedroom. Icannot sleep when TV is on.(60歳男性) 」などと、奥さんの身勝手に悩む男性も居られたのです。

実は夫婦の寝室が別室となる興味深い理由として、なんとわが国の伝統的な住まいの形にあったことも意外です。「寝室は和室のふとん? あるいはベッド?」に意外な傾向を見ることができたからです。夫は「和室に布団」妻は「洋間にベッド」当たり前のことのようでしたが、いざ夫婦の寝室となると問題です。かくも夫婦とは奥が深くさらに興味深いものです。しかしながらこの寝室が別々、しかも別の階に寝ていて、真夜中にどちらかに体調の変化や侵入者などがあったりでもしたら大変です。夫婦とは一体なんだったのだろうなどと言うことにもなりかねません。

和洋夫婦寝室
和洋夫婦寝室 T様邸(天野彰)

2 和洋『夫/婦寝室』?

家づくりの現場では、夫婦や家族を一つにまとめて間取りや家の形を決めてはいけないのです。

家族が仲良く住める家は、確かに夫婦が円満でなければなりません。しかし「家族は一つ、夫婦も一つ」などと言った“幻想”を抱いているとアンケートのように夫婦は「別々に寝たい」などとなるのです。今、住まいの中で一番不安なのは同居でもなく、子育てでもなく、「夫婦」です。実際に住まいづくりのお手伝いをする設計者はこの夫婦に大いに惑わされ、裏切られることも多いのです。

現代の家族は決して一つではないのです。そこでその家族を分解して「夫婦」「子ども」、そして「親夫婦」と分けてプランニングをすることになるのです。ところがなんと、これも間違いなのです。

まず「夫婦」はアンケートのとおり、夫と妻それぞれ別々で一つではないのです。もちろん「子ども」も男の子か女の子、あるいは長女、次女さらに性格も年代も別々でバラバラです。親夫婦も同じことで、それも夫の親、妻の親とではこれまたまったく違うのです。住まいづくりでは家族は「それぞれ」でそれぞれの意見や要望があるのです。どの夫婦も「子ども、子ども」と子どものことが最優先となり、まるで子どものために家を建てているかのようなのですが、そんな家に限って夫婦の寝室よりも広い“快適な子ども部屋”を与えてしまい、結局は「オレの部屋」となって親子の断絶の原因となりかねません。

この子ども優先の体質が問題で、多くの家に共通して言えるのは、子どもが大きくなっても「子どもの家」のままとなってしまうのです。あっという間に子育ても終わり子どもたちは出て行ってしまいます。そしてどの家も今までの子ども部屋を妻の寝室などに使って別々に寝ることが多いようです。もともと、夫は早い時期から1階の和室あたりで寝起きしているなどという例もあり、1階と2階に別れて寝る夫婦も多いのですが、これは危険です。夫がなかなか起きて来ずのぞきに行ったら亡くなっていた、などという悲しい事も起こりかねません。妻が夜中に侵入者による危害を受けた例もあります。せめて隣の部屋か、同じ2階で寝ていたら声や異変に気付いたかもしれません。

しかし現実は、子どもの夜泣きに始まり、いびきや寝言などが原因で、夫婦は別々に寝るようにもなります。いくら仲の良い夫婦でも、次第に日常生活に「時差」が生じて来て、暖房やクーラーなどの「温度差」も生まれます。あるいは夫は畳の座敷の布団で、妻はベルサイユ宮殿風のベッドで寝たいなどの好みもあります。

そこでイラストのように、互いの寝室を和・洋に分け、引き込み式のふすまを立てます。これなら寝室は一体の一部屋で、相手の時差も温度差も気になりません。もしどちらかが風邪を引いたときでも、仕切って寝られるので安心です。

夫婦の和洋寝室
和洋 夫/婦寝室(画:天野彰)

これでいいのです。「家」はもともと「戸」で囲まれた「寝る戸」で「寝戸」すなわち「いへ」なのです。住まいの原点は夫婦の寝場所です。この「夫婦寝室」は「夫/婦寝室」となります。要はこの夫婦の間の「/」が重要なのです。

「いやあ、スーッとふすまが開いてね。妻に呼ばれてドッキリ!」なんてこともあるかもしれません。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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