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建築家 天野 彰 夏を涼しく!京都は暑いが、なぜか涼しい?

人のことは言えませんが、私たち日本人は皆、脆弱になったなあと、つくづく思います。いやこれは全世界的なことかも知れませんが、暮らしがそれぞれが良くなり、便利になり総じて贅沢になっているのです。のような中で地球はますます温暖化し、長寿命高齢化が進みます。これは単に人口が増えるだけではなく、その生存の時間が長くなりその分の熱エネルギーの負担も増します。そしてますます地球はCO2が嵩み熱くなるのです。そのせいか、各地に異常気象が起き気候そのものが変わろうとしているのです。梅雨前線の停滞、急激な分厚い積乱雲と線状豪雨。都市部ではゲリラ豪雨が常態化するのです。そしてこの台風到来前のフェーン現象の様な蒸し暑さです。沖縄を除き日本列島はこのまま蒸し暑い夏となると言う。

1 そんな蒸し蒸し暑い中で夏の恒例の京都の祇園祭りが行われで20万人以上の人が集まった

この京都はもともと盆地で夏暑く冬寒いところだが、実は不思議なことにあまり暑いと感じたことがないのです。まさに個人的な感覚なのかも知れないのだが、住む人によると東京や大阪や名古屋はもっと暑いと言う。なんと、コンクリートとアスファルトで“空しく”暑さを感じるのだと言う。

なるほど、ここが問題と気が付いたのです。考えてみれば庇のないビルの照り返しの上に、機械冷房の室外機からの排熱と音、さらに渋滞による車の排気熱…。情緒もなければ、なるほど“空しい暑さ”となる。

祇園祭の鉾柔軟に動く
祇園祭の鉾柔軟に動く(天野彰)

暑い中で感じる涼しさを京都で感じる

ここで改めて「住まいは夏を旨とすべし」の原点、いや原理が京都の街や家にあるのです。さすが千年の歴史ある街の工夫がなされているのです。たまに京都を訪れた旅行者には分からない涼しさがあると言う。確かによく見るとどの家もクーラーに頼って戸を閉じている様子もなく、まずその室外機すらにわかに見つけがたい程なのです。なるほど暑い中その庇の影や日よけの縁台に居ると涼しさを感じるのです。

暑い中でこそこの涼しさを味わえ、感じられる“涼味”と“涼し気”を見つけることができるのです。それも単に偶然のことではなく、きわめて合理的で、かつ生理学的で心理学的な科学手法に基づいていることが解かるのです。

そう、かくて京都の家は涼しいのです。

京都町家の長江家正面(画:天野彰)
京都町家の長江家正面(画:天野彰)

暑いが涼しげな京の町家の風情(画:天野彰)
<暑いが涼しげな京の町家の風情(画:天野彰)

2 日本の暑さは地形が原因。その地形を活かして大都市が生まれた

ではなぜ暑いのかを気象学的に見てみますと、その暑さには日照りの灼熱の暑さと、日本特有のモンスーンの蒸し暑さがあります。よく目にされるあの気象図、すなわち天気図ですが、高気圧に囲まれて比較的カラッとした暑さと、梅雨時期のような前線による蒸し暑さがあるのです。いわゆる気圧のはざまに湿った空気と乾いた空気、温度差によるせめぎ合いと、海上で熱せられて蒸発した湿った空気が流れ込んで気象が変わるのです。そこにわが国特有の地形が加わります。あの日本列島を縦走する山脈です。

こうした地形に太平洋側では南の海を迎え見るような都市ができます。これが大阪をはじめ名古屋、東京などの大都市なのです。そこに産業が生まれ、文化が育ち政治の中枢が生まれたのです。これが京都のように四方を山に囲われた平穏な盆地ではまた特殊な気象となるのです。

必要なのは地域に適した家づくり。現実は地域など関係ない「田舎の屋敷」づくり

ちょっと理屈っぽい話になりましたが、実はこの簡単とも言える理屈が現代の家づくり、現代の都市づくりにかなっていないのが大問題です。そこに今のこの夏の住み難さ、さらには災害の発生の危険をもはらむのです。この夏に起こったあの九州北部の線状豪雨やゲリラ豪雨などはまさしく温暖化の現象で地球規模での人類の大問題ですが、毎年夏の都市に起こる集中豪雨などはまさしく建築的、都市計画的な原因と言えるのです。このあたりは耐震や防火と共に行政が取り組まなければならない大問題なのですが、今となってはそこまで法制化は期待できないかも知れません。
つまり、住まいや街は農村や地方都市にあった、民家をそのまま都市に押し込め密集したことに起因するのです。まさしく利便性のある都市に“田園都市”の発想でつくってしまったのです。家の形はいまだに“田舎の家”なのです。

イラスト:一般的な町家のプラン(画:天野彰)
イラスト:一般的な町家のプラン(画 天野彰)

そこで狭いと土地に三階建てや、さらに高層住宅を密集してますます都市はスラム化するのです。それを防ごうと建築規制を掛けるのですが、人々の欲望は留まるところを知らず、ついには今まで住んだこともない超高層民家となるのですが、その家の本質はいまだに持ち家志向の田舎の屋敷の発想なのです。
ここは欧州のプラッツァや市場を囲んで出来た集合住宅とは本質的に異なります。まさに大陸の狭間にいて城壁の中につくられた城塞都市の集合住宅でそこにコミュニティが生まれたのです。

地域を活かした京都の町家が都市に必要な家づくり

ここで改めて京都も見てみるのです。その街並みの法や合理的なプラン展開から、まさに都市型住宅のあの町家の発想となるのです。そして駆使された“住まい科学”です。そこに木造ながら密集するための防火対策や通気や採光のための植栽や通り庭さらには切通しなどの工夫がなされ、それが今の京都の風情ともなっているのです。

京都の町家:住まいの八方から植栽が見えいかにも涼しげ・玄関から裏の台所まで続く通り庭(天野彰)
京都の町家 住まいの八方から植栽が見えいかにも涼しげ・玄関から裏の台所まで続く通り庭(天野彰)

  • 3 弱気になった途端家相が気になる?
  • 日本独特の四季により文化が形成される

    フェーン現象はまさに同じことで、わが国の南北縦長列島の平面と、南北が海と山との立体的な地形によるものなのです。この誰でもが知っている日本の四季の気象のはずなのですが、案外その立体的断面と方位による気象の現象であること知る現代人は少ないのです。しかしそのおかげで季節を楽しみ、味わう我が国独特の風雅の源であり、農作物の植え付けの時期までも図っていたのです。それがわが国の文化であり、持続する繁栄と人知の元でもあったのです。

    気候により生まれた独特な「塗膜」が日本古来の家をつくる

    千年も、いやもっとその10倍も古くから先人たちはこのことを知っていて、わが国にしか生えない漆の樹液を使って、この湿気でしか乾かない永遠の塗膜と奥深い光沢の美を持つ漆器を生み出しているのです。それこそが世界で「ジャパン」と呼ばれる技のです。こうして古来わが国の家や、今に残る京都の町家や、桂離宮などの宮廷や伽藍の平面図と立体図が生まれていることを思い起こしてみようではありませんか。

    日本の都市型住宅に必要な光と風を呼び込む「中庭」

    まずはあの雁行する平面は、まさに光と風を呼び込み、時とともに移り変わる光景を楽しむものであり、それが狭い都市の中の町家となると植栽(中庭)を真ん中に配し、そこから光を呼び込み、立体的な風洞となり、強い日差しで熱せられた屋根で上昇気流を引き起こす。家全体をみごとに大きな換気扇としているのです。

    イラスト:京都の町家の平面と立体大きな“換気扇
    イラスト 京都の町家の平面と立体大きな換気扇(画 天野彰)

    中庭は単に家の中で楽しむ庭ではなく、光と風を呼び込むわが国の都市型住まいの技で、そこに草花を植え、月や雪など四季の情景を楽しむ、小宇宙なのです。そのプランニングは「光」と「風」と「時」であり、四季折々の朝な夕なの情景がすべてのテーマとなり、わが国の優しい人間性ともなっているのです。

    写真:南北表と裏を貫く町家の通り庭
    写真 南北表と裏を貫く町家の通り庭(天野彰)

    4 箱の家ばかりの現代、季節の変化を感じられない

    わが国の都市の住まいは「光」と「風」と「時」を軸として、恵まれた四季折々の朝な夕なの情景がすべてのテーマで、しかも夏を旨とすべしなどと書きながら、思わぬこの夏の、あまりに不純な天候の夏となり、まさに気分も体調も筆を進める元気も無くしました。が、気合を入れて、思い直して改めて家々を見てみると、なんとどの家もそんな気候の変化などどうでもいいような家ばかりであることに気が付いて驚いたのです。

    よく言えば断熱の効いたベニヤ板とスレートサイディングの全天候型の箱の家ばかりで、集合住宅は土地利用の効率的な空へ空へと伸びる鉄筋や鉄骨の高層マンションばかりなっているのです。しかし、思えば、750年前の兼好法師がこのありさまを観たらいったいどう思うことかと考えると悶絶どころかきっと気絶をするに違いない!そう考えると、さらにその変化が見て取れるのです。柱と屋根だけの傘の家が一体どうしてこうも変われるものかと確かに不思議と言えるのです。なるほど今年の夏は別としてこうして次第に秋となり、やがて春が来るのです。大きく日本の気候は変わってはいないのです。人々もいろいろなでき事があったにせよその本質は変わっていないはずです。

    しかし現実は季節のない家ばかりとなり、大小はあっても皆同じ家で、そこで人は同じように暮らし年を取るのです。この当たり前のことが長年に渡って受け継がれ人々は変わっていないはずです。

    四季の変化に合わせて工夫された昔ながらの「京町屋」と集合住宅「長屋」

    それこそ四季の変化によって、人々はそれぞれ家を建て、そして生活しながら工夫をしてきたのです。

    日射を避け、風を呼び込む深い庇の家(画:天野彰)
    写真 日射を避け、風を呼び込む深い庇の家(設計 天野彰)

    中でも夏を過ごすことは大きな課題であり、それは「物理」であり、「心理」であると分かっていたのです。そこに京都の町家があり、商家には梲(卯建)ができ、農家では茅葺きの合掌造りが生まれ、江戸の密集地では長屋の文化が生まれ、寄り添って暮らす独自の集合住宅が生まれたのです。

    自分の家は自分で創り、自分で守る!

    それらがそのまま日本人の心となり人格となっているのです。今それに戻ろうとするのも何ともナンセンスな話しのようなのですが、ちょっと工夫して自然に夏を過ごそうと考えるのです。

    わが国の住まいの原点高下駄の“葦の丸屋”(画:天野彰)
    イラスト わが国の住まいの原点高下駄の葦の丸屋(画 天野彰)

    すると古人の知恵と暮らしが見えてくるはずです。それこそが電気が停まり、年老いて一人になったときを考えるのです。

    夏の装い(画:天野彰)
    イラスト・写真 夏の装い(画 天野彰)

    その気持ちだけでこれから暮らしていく私たちの家はどうあるべきか、メーカーや人に頼らず、自分だけで自分の暮らしをちょっと想像してみるのです。地震も台風もさらには火災に見舞われるかもしれません。しかし自分の家は自分で創り自分で守るのです。その気持ちだけで、現代の家探し、家づくりそしてリフォーム計画が変わってくるのです。

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    建築家 天野 彰建築家 天野 彰

    建築家 
    天野 彰

    岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
    「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

     一級建築士事務所アトリエ4A代表。

     一級建築士天野 彰 公式ホームページ
     一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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