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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 リフォームで減災 今の家をどう守るか?

1 あの度重なるいろいろな災害からいかにしてわが家わが家族を守れるか?果してリフォームなどで…?

しかも誰もが自信を無くした、あの3.11東日本の大災害が起こり、すでに7年の年月が流れ、その間もこれでもかとあちこちでいろいろな災害も発生しています。特に東南海の巨大地震のおそれもあり、それらのすべてに対処した防災など考えようもなく、本音では、ま“来たら来たで仕方がない”などと諦めムードであったり、手入れの必要な持ち家など処分して、安全そうな場所の家賃だけ支払う賃貸住宅に移り住む?などと開き直っている人も多いのです。

震災から7年経って見える現状

しかし住むと言うのは人あっての家や街や都市であり、それが社会なのです。そこでこそ人は活き活きと生きて行けるのです。悲惨な東日本の災害に際して、人々がいくら復興だ、帰還だ、と叫んでも、人々はその難しさとをまざまざと見せられてもいるのです。

7年経った今となり、実はあれは災害などではなく事故であり、人災であって最大の責任は無策の行政や政治にあると言う人も多く。特に福島の原発事故は予備電源を低い海側に配置するなど、建築の専門家から見ても明らかに予測設計不備の企業責任であり、関係機関、行政の責任であり、リスキーな(思ってもいなかった?)原発電力を選択した政治責任を問われる所以なのです。しかも今もそれを稼働させ続けなければならないのも社会が必要とし、企業利益であり、CO2削減の大義名分である

写真:仙台閖上地区のわずかな防護壁さえあれば助かったであろう木造民家(撮影:天野彰)
仙台閖上地区のわずかな防護壁さえあれば助かったであろう木造民家(撮影:天野彰)

日本は、地盤改良と老朽化した交通網の強化が必要

防災の理念とは古今東西人民を守る街や国家の首長の責任であり義務だったはずです。国防は外交努力と備え、さらに自然災害はまぬがれようもない火山列島でプレート地震国の日本は地層地形から見た地盤利用の選択指診と同時に河川とその伏流水を含めた地盤改良補強が急務なのです。その上に建つ都市の耐久年数から見た治水土木、縦横に発達した交通網の橋やトンネル、老朽高架の根本的なやり替えが急務なのです。僅かばかり人に供し、しかもたった一時間弱の短縮時間のためにリスキーなアルプス抜けの政治的イベントの鉄道工事に10兆円をも掛ける首長の判断は、オリンピックや万博建設工事同様、どれほど国民の真に支持を集められるのか、さらにその費用があれば、どれほど多くの国民を災害の危機から救えるかを考える必要があるのではないでしょうか?

「減災」について真剣に考える

この3.11は原爆被害と、津波災害の国である政権を担う人や専門家たちは皆、ちょっと足を留め、今一度考える日で、同時にそんな国に住む人々も、たとえ災害は防げなくとも家族の命だけは守る「減災」を考える、「想像の日」ではないでしょうか。

福島では「3.11は終わってはいない。事故災害は始まったばかりだ!」と言うのです。

いざと云う時に農機具や家畜共々逃げ込む円形集合住宅シェルタ-(天野彰)
いざと云う時に農機具や家畜共々逃げ込む円形集合住宅シェルタ-(天野彰)

2 減災とは災害に巻き込まれないために普段の生活から気に掛ける

減災は、先ずはそれぞれの家の中で家族一人一人が災害に巻き込まれないようにすることで、速やかに逃げることが第一なのです。もちろん未然に住まいの弱点を見つけ構造補強をしたり、日ごろから避難ルートを学習し、家族との連絡を密にするシミュレーションをすることなのです。が、高齢でひとり暮らしも多い昨今できれば同じマンションの住民、近隣、そして家族各自の勤め先や学校などとも日ごろから連絡手段を確保することも大事なのです。しかし案外、いざその災害に遭遇するとどなたもそれができないのです。そこで、今日から、住む人自身はもとより家族同士や近隣で話し合うことから始めるのです。するとわが家の玄関、あるいは勝手口までの間にいかに危険な家具や冷蔵庫などの家電が多いことが分かり、それらが行く手を防いだリ火災を引き起こすかもしれないのです。さらに家の外に出ても危ないブロック塀や空家などが見えて来ます。行く手にはガソリンスタンドや歩道橋や橋などがあり、それらが崩壊して渡れなくなるかも知れません。近くに川があればそこから水が溢れ出して来るかも知れないのです。

減災は「想像力」なのです。あまり悪いことばかり考えて萎縮することもいけませんが、わが家族わが身を守る為と考えればそんな想像も必要なのです。

先人の知恵を忘れずに、日頃から災害を意識する

とにかく逃げるしかないあの大津波の恐ろしさは3.11東日本で身を染みて実感したことですが、実は11月5日が「津波防災の日」であることはあまり知られていません。150年以上も前の嘉永7年(1854年)11.5紀伊半島を襲った安政南海地震の大津波で、収穫されたばかりの稲穂に火を放ち暗闇の中で高台に村民を導いた「稲むらの火」の逸話から政府が制定した日なのです。確かに今も巨大地震の可能性は首都圏をはじめ東南海トラフ沿いの関西方面の人口密集地に巨大津波が襲う可能性があるのです。しかもそれが真夜中かも知れません。その時灯りをどう確保し、どこにどう逃げるか?です。3.11での釜石の小中学生の自主避難の勇断は記憶に新しいことですが、石碑には「100回逃げて100回来なくても101回目も逃げる」と記されていることに感動です。

参照 外部サイト 内閣府「津波避難3原則」ホームページ

仙石線の高架で止まった家(塩竃市)(撮影:天野彰)
仙石線の高架で止まった家(塩竃市)(撮影:天野彰)

3 災害時を想像することが大切

いつ来ても、どんな災害にも対処することは不可能です。しかし常に想像することはできます。それもびくびくしながら災害に備えるのではなく、ちょっと想像して自分自身のドラマを勝手につくるそんな感じでいいのです。それはどこに居ても何が起ころうとも対処する方法を考え、シミュレーションすることがいざと云う時の逃げる方向や逃げ方を見極め逃げる想像をしてそれに成功したなどと自己満足をするだけでいいのです。

例えば今リビングでテレビを見ていて、突如ぐらっと大きな揺れが来たと想像するのです。それも夜でいきなり停電となり真っ暗となったと仮定するのです。最悪のシナリオですが、そうしてあたりを見るとテーブルの物が崩れて来たり、棚の物が次々落ちてくる、冷蔵庫のドアが開いて手前に倒れてくる。立てかけていた姿見の鏡が行く手に倒れガラスが飛び散る。玄関のドアが歪んで開かない。そんな最悪のシナリオはあり得ません。来るはずはないと誰もが思いたくなります。

イラスト:なぜ倒れるか?家具は天井まで固定(画:天野彰) 写真:中越地震では家の中のあらゆるものが散乱し大けがをした(撮影:高橋進氏)
<なぜ倒れるか?家具は天井まで固定(画:天野彰)>
中越地震では家の中のあらゆるものが散乱し大けがをした(撮影:高橋進氏)

防災グッズや避難用品は準備しておくこと

減災とはその想像でわが身と家族を守ることができるのです。まずは携帯電話を身の周りに持っているか。現代は家族それぞれが携帯電話を持つ時代です。その灯りであちこちに置いた懐中電灯を探します。懐中電灯は今日では一基千円ほどです。最低十個二十個は住まいのあちこちに置いておくのです。いくつかは乾電池を出してテープで止めておきます。これで先ずはクッションなどで頭を守りながら、そばにある懐中灯を探し出し、それを持って行く手のルートを確保するのです。家族に大声で声を掛け、同様な指示をし、聞こえなければ携帯でもコールするのです。瞬間は電話も通じるはずです。玄関ドアが開かなかった場合に備え大型のバールを玄関クロゼットや、下駄箱の奥に忍ばせておくのです。

こうした最低限の避難だけはできるように普段からスリッパは履くようにし、防災グッズや避難用品の用意し点検をしておく。耐震のためにあらゆることに万全の用意するのではなく、わが家独自の最低限の備えをできることから始めることが減災の第一歩なのです。

4 減災は命を守るためのルート確保が大切

防災、防災と言うとあらゆる災害、あらゆる事象で万全の用意することと思いがちです。そんな広範囲に防災などできようもなく大方の人は「ま、来たら来た時のこと」などと、心の内で思ってしまうものです。こうして防災はできずにその準備も怠り、いざ来た瞬間には慌てて何の行動も取れず、不幸にして被災してしまうのです。実際にあらゆる地震や津波や洪水や火災、そして台風や大雪などと被災された人たちの多くの意見を徴収することからある種の共通する意外なヒントを得られたのです。それこそ「命だけでも助かって良かった」です。助かることができたと言うことは災害から逃げおおせたと言うことです。たとえ家は失っても命だけは守ることができたと言うことです。

そして、家族とも連絡が取れ今避難所で一緒に暮らせている…です。ここで重要なのは家族との連携とさらに地域のサポートなのです。

減災はあれもこれもするのではなく、まず命を守ることそのためのルートの確保と避難場所の設定なのです。

危険度順位を決め順番に防火減災をする(画:天野彰)
危険度順位を決め順番に防火減災をする(画:天野彰)

家を守るために、倒壊の恐れのある方向に頑丈なコンクリート製のガードをつくる

そこでまずわが家から最低限の備えをと言うことですが、よく徹底した耐震補強や防火が叫ばれていますが、まず家から外へ、避難先までのルートを実際に歩き見直し、火災発生や倒壊を想定してみるのです。するとわが家の危険な場所の耐震補強、隣家の状況からの倒壊や防火の外部防御の順位と防災工程をつくる。
さらに逃げる際のルート遮断の想定や、地域によっては津波や河川の氾濫などの危険が迫る方向を日ごろから想定し、避難先を複数用意し家族とも示し合わせておくのです。
耐震工事も早い方が安心ですが。なかなか簡単にはできません。阪神大震災で家が傾いたために古い電柱を数本方杖のようにつっかいをした民家が無傷で生き残った例もあるのです。

東日本大震災では頑丈な塀によって津波は受けたものの倒壊は免れ、家財の多くが助かった家もあるのです。山沿いでは山側に頑丈な擁壁をV字に造り土砂から助かった家も多いのです。

全方向を防御するのではなく取りあえず危険な方向にまるで船の舳(へさき)のような頑丈なコンクリート製のガードをつくるのです。これは沿道に住む人の家で度重なる交通事故から身を守るためと言う新たな減災かも知れません。

阪神大震災で古電柱の方杖一つで助かった家もある。(画:天野彰)
<阪神大震災で古電柱の方杖一つで助かった家もある(画:天野彰)>

5 度重なる災害で変わる世の中

増築よりも「減築」の言葉が生まれ、その言葉が世に浸透した頃か?阪神大震災が起こりそれを機に、あちこちで地震も起きて耐震気運がにわかに世に浸透し、高速道路や河川の補強工事、さらには公共建築や学校など、多くが耐震工事がなされ、やや安心な都市生活や住まいとなったのです。ところがあの3.11の東日本大地震の津波が起こって以来、たちまち耐震とは違う津波災害に目が向けられて、しかも原発の破壊という重大な災害を迎え、一気に失望感と言うか、多少の耐震や防災などではとても歯が立たず一気にそのやる気が半減してしまったようにも見えるのです。

いつどんな時でも「わが身はわが身で守る」心がまえが大切

これは個人では到底手におえず、頼みの自治体にしてもさらには政府でさえも「防災」は単なる枕詞のようになってしまったように思えてなりません。それこそが行政や政府が苦しまぎれに発した「減災」の言葉に相違ないのです。しかしその本質的な概念こそ、偶然にも最低命だけは守ると言った「減災の心得」とも言えるのです。かく言う建築専門の筆者でさえも果たしてそれほど防災を徹底しているかと言うといささか自信が無いのです。しかもあの二年前の熊本地震の震度7の直下の激震が立て続けに二度も起こるようなことがあると、耐震構造そのものの概念が根底から覆され、北朝鮮のロケットが上空を通り抜けるとなるとまさしく何をやっても無駄!と、誰もが諦めの心境になるだろうと思えるのです。さらに驚くべきはこうした事態に行政や政府、地震学者などまでもがその予知や対処策にやや諦めムードとなっているとも言うのです。そこで今回のコラムのように、家全体を守ると言うことより、いつどこでどんな時にもわが身を守ることが一番!で、少しでも被害を防ごうとする最低限の「減災の心」が必要と言うことになるのです。

それこそあの「津波が100回来ると言われ逃げ、実際に来なくても、また101回目も逃げる!」と、津波を防ぐことより、「わが身はわが身で守る」と言うことなのです。

身近なところから防災や減災を始める

このことは身近なことで言えば、日常からどこに居ても非常出口を何気なく見たり、その出口付近に居て、時々は周りを見回すなどです。どんな事態にも備えることはできませんが、常に小さなビニール袋や小さな懐中電灯などを鞄やポケットの片隅に忍ばせるなどです。
これでいざという時4、5回の空気で呼吸ができ、暗がりでも脱出できると言うことです。家に居ても大きな避難袋や盛りだくさんの非常食を蓄える前に携帯電話の交換電池やスリッパ、ヘルメット、懐中電灯などを常に枕元に置くなどが本当に役に立つのです。

何やら毎日びくびく暮しているようなのですが、さにあらず。これを単なる習慣にするだけで豊かに暮らせるのです。

やはり防災や減災さらには耐震や防火は身近なところから気楽に始め、欲張らず常に周りに気を配り、そうした事態を軽く想像するだけで事故や災害から未然に身を守る事ができるのです。まさしく減災は「セルフでフェンス」なのです。
参考までに、京の町家から発想し、家づくりやリフォームで実際に応用している中庭式の木造の家でその周りを分厚いコンクリートの擁壁で囲った「セルフ・ディフェンスハウス」を紹介します。

次回は「壊すか生かすかあなたの住まい」です。

イラスト:セルフディフェンスハウス断面図・立体図(画:天野彰)
セルフディフェンスハウス断面図・立体図(画:天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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