住宅関連記事・ノウハウ
暖かい家 「暖かいリビング」のプランニング
1 四季を感じる家から変化する家づくり
異常気象が続き暑い暑いと言っていたのがつい先日で、今度は急激に寒くなって戸惑っている人も多いはずです。わが国にはもともとはっきりとした四季がありゆったりして綺麗な春と秋の風情がある素晴らしい気候の国と誇っていたはずです。、最近は、あっと言う間に秋が過ぎいきなり真冬です。この春も同じであっという間に真夏で、豪雨があちこちで起こり灼熱の夏日が続き、オリンピックのマラソンまでが札幌開催になってしまうほどです。
この先気候変動でまるで二季のような暑い夏と寒い冬の暮らしとなるとそのための暑さ寒さ対策だけを重点にした趣のない家づくりなるのかも知れません。
解放感より断熱性の高い窮屈で、暮らしの楽しさより単純な間取りになる?
まずは今日までの開放的なわが国の家のスタイルはいきなり寒さ暑さを防ぐ高気密の開口部にし、極端な夏冬対策も必要で、採光の開閉と断熱、寒さ断熱と遮熱の2つの方法と、効率の良い冷暖房システムが必要となるのです。間取りも大きく変わりそうです。外壁面積と集光遮熱に加え、通風と密閉を考えると、今までの南向きの開放的なプランニングより外壁に遮熱断熱の難しい開口部が無い町家のような中庭に向いた家なるのでしょうか?
部屋割りも従来のりビングダイニングキッチンは極力集約し、寝室も子ども部屋も寝る空間として一体にし、家事室や書斎などのユティリティは部屋の片隅に付け足す?などです。
<夫婦仲良しリビング一体の書斎と家事室(画:天野彰)>
落語の「食う寝るところ・・・」ではなく、食う居る処と寝る処の二つのユニットだけとし、それぞれに給排水や暖冷房設備がくっつく、宇宙ステーションのような形態となり、生活ユニットと就寝ユニット+ファシリテーパックのような単純な間取りとなるのかも知れません。
コンパクトな空間に暮らす秘訣は一体化すること
朽ち行く都市のインフラの今後を考えると太陽光発電はもとより屎尿分解発電パックや水再生ユニットなどが張り付く家となるのかも知れません。
空気再生どころか酸素発生装置までが必要とならないように祈りたいものです。極論とは言え現実的に異常気象となるこれからの住まいではさらなる高気密高断熱の窮屈な家となることは避けられません。
<壁の中の厚さ10cmの「オヤジデスク」「ママデスク」(画:天野彰)>
生活も極力縮めて書斎や家事室も暖かいリビングの脇に一体としてエネルギーを無駄にしないことが地球環境にも優しいのかも知れません。あこがれの書斎も家事室も前回お話したあのリビングの壁の中の書棚を利用したまるで選挙の投票所の机のよう奥行き10cmのオヤジデスクや家事コーナーのママデスクとなり、子どもの学習机もダイニングテーブルと一体化してジャンボテーブルとするのです。これからの時代は“狭楽しさ”がコンパクトで家族も一体の暖かな家となるでしょう。
<家族みんなの勉強部屋「ジャンボテーブル」(画:天野彰)>
2 「暖かい家」の灯りと設備のお話し
広い家よりコンパクトな家で暖かい
今まで広い家で家族それぞれ個室でしかも夫婦も書斎や主婦室があることが理想と言っていたのですが、次第に家族が出て行ってと広い家はかえって寂しく寒々しくなり、夫婦も別々より台所の片隅で家事室と書斎コーナーのようにあえて一つが暖かいのです。
<夫婦一つの台所の夫婦室(画:天野彰)>
暖房は一か所ですみ、照明も一つ、温もりもあってお茶やコーヒーもすぐに出せて、掃除も行き届き夫婦間も暖かくなる?のです。何よりも光熱費が安くて済み、おまけに地球温暖化にも役立つのです。
心にも優しい部分照明で快適な暮らしをつくる
もともと人類が他の生き物より発達し発展し得たのは火を得たことだったのです。その火を扱え、操れいろいろな道具をも生み出すことができたからです。おかげで外敵から身を守り家族を守りさらに攻撃もできたのです。今その火によって世界を、地球までも焦がしかねないほどになっていることが悲しいのですが・・・。
こうして家族は営々と火の回りに集まり、一つの輪になって暮らして来たのです。それこそが団らんであり家族の姿なのです。火はまさしく灯りで暖を取りその灯で家族の顔を照らすものでもあったのです。その灯りは次第に照明となり文字通り辺りを照らして明るくするものとなったのです。今その灯は蛍光灯やLEDとなり、家どころか街中を真昼のように明るくして人々の生活を根本から変えてしまったのです。わが国の家の夜は炉辺の灯りから裸電球となり、夏の暑さからか涼しげな蛍光灯となり、さらにエネルギー消費の少ないLEDへと進化して眩しいほど明るい家となっているのです。
しかしそれに比べて西欧の灯はなぜかいまだに灯のままで優しく照らす部分照明が多いのです。そのため日本人の多くは欧米のホテルは暗くて新聞を読むのも見づらいと言うのです。しかしそれも次第に慣れてくると必要なところが明るくかえって目も疲れず暖かみも増してくると言うのです。
照明はただ明るさだけではなく暗さも加え、その灯の数を多くしてそれぞれのオンオフができ、調光もできるようにすると、同じ住まいが灯りの演出で色々に変化し、家族の生活にもメリハリができ、表情も生き生きとして来るのです。まさに季節や時間、そして生活イベントに合わせて灯りを自在に繰るのです。
<イラスト左:生活行動に合わせた照明配置 写真右:白川郷の炉辺、合掌造り全体の暖房、家族団欒の灯なのです(画・撮影:天野彰)>
3 もっと暖かく住まいを包む
箱根峠標高800メートルほどの山荘は、暖冬とは言え夜間外は零下になるのですがこの家の中は暖かいのです。しかも壁には一切の断熱材はなく、無垢の杉100×60ミリほどの角材を一間の柱間に嵌めて積層造り、そう“校倉造風”のログハウスです。
家づくりは「断熱性」
私の実験住宅の山荘で30年ほどになります。床と天井のだけは断熱材を充填したものの壁は無垢の杉の積層材のみなのでが、一部のシャッターと雨戸を閉め、中のカーテンを引くとまったく寒さを感じないのです。従って室内はクロスも仕上げもなく杉の板肌のみで、これがまた白熱照明でさらに温かい雰囲気を醸し出してくれるのです。
<箱根山荘「積層校倉造り」(天野彰)>
今の家の壁や床は主に断熱材が施されていて暖かいのですが、肝心の開口部の断熱がしにくく、特にマンションの窓は外部は障れないのでインナーサッシなどでさらにその間に目隠しブラインドを付けると熱を遮断して暖かいのです。
廊下やトイレ、脱衣室はヒートショックのリスクが高いので特に温度差に気を付け、出来れば床暖を施します。浴室の窓も二重サッシにして、天井にはバス乾燥機を取り付け入浴前に予備暖房をするのです。脱衣室の壁面のハンガーパイプ式暖房パネルも部屋を暖めるとともにタオル類も瞬時に乾かせ効果的です。
入浴の際も少しの工夫で温か
そして風呂の入り方にもひと工夫です。お風呂に入る前にシャツを着たまま、やや熱めのシャワーや湯にしてそれを桶で高く落下させるように空気とお湯をかき混ぜるのです。これが身体のストレッチになると同時に蒸気が浴室の空気を暖め湿度も増すのです。なによりもお湯に空気が混ざりマイルドに滑らかくなるのです。草津温泉の“湯もみ”効果なのです。
<風呂に入る前に熱いシャワーやお湯で空気を温める(天野彰)>
住まいを寒くするのは北向きの玄関です。道路付けや間取り上仕方がないのですが、特に“鬼門”となる北東向きにすることは避けましょう。外部と室内を繋ぐ土間の玄関ドアはどうしても冷たい空気が入り密閉できません。スペースがあれば二重ドアにし、間にシューズクロゼットを設け、そこを床暖にすると濡れた靴や傘など雨具を乾燥させ犬の居場所にもなります。
効果的なのは玄関土間からの上り端に引き戸を設け、冷気をそこで遮断することが効果的です。
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