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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 健康住宅 長時間過ごす家、潤いある健康な空気を!

1 潤いある健康な空気を!

緊急事態宣言発令前の寒くなったころ、新築の住まいやマンション病院福祉施設などに訪問して家のにおいが気になりました。マスク越しにもなぜか新建材や塗装のにおいが気になるのです。ひどくはコンクリートやセメントのにおいがそのまま鼻に付くこともありました。寒さのため締め切っていて、もともとコンクリートや新建材多用の建物で当然なのですが、それにしても長時間居るのには気になります。だからと言ってその表面を吹き付け材や塗料やクロスで仕上げても、所詮コンクリートや新建材の“箱”であり冷ややかさも否めません。中に入ってもその玄関やロビー、談話室、そして療養室へとコンクリートの独特の空気が漂うのです。寒く乾いた季節は室内が異常に乾き、冷え冷えとするので、この季節の住まいや集合住宅、医療や介護施設は“乾いた空気”を注意する必要があります。特にウイルス撃退のためには通気や換気を心がけ、加湿もしなければなりません。

年中湿気の多いわが国の住まいは、通気の悪い家の中に漂う空気はコンクリートや建材のにおいだけではなく、毎日の調理などのにおいやペットのにおいなどが染み付き、医療施設では消毒液やエタノールなどがにおい、老人施設はその生活臭が染み付きます。

都会の中に “山小屋”を?!

コンクリート構造のマンションでも寝室やリビングなどは取り付ける床や天井、窓枠(内窓)やドアなどの建具や家具を極力無垢(むく)の木製にしてカーペットやクロス、カーテンも分厚いウールや木綿素材にするだけでも室内空気がしっとりし、都会の中の山小屋です。

都会の中の山小屋(画:天野彰)
<都会の中の山小屋?(画:天野彰)>

反対にその表面をカムフラージュしようとして通気性のないビニールクロスや塗装をして塞ぐと今度は下地の建材や接着剤などを乾きにくくしてしまい、かえって後々までにおうのです。室内の調湿にも優れものの建材は、珪藻土(けいそうど)です。

建具に貼られた珪藻土ボード(撮影:天野彰)
<建具に貼られた珪藻土ボード(撮影:天野彰)>

空気中の湿気を吸い、空気が乾燥した時は吐いて湿度を安定させる調湿作用があり、しかもにおいや化学物質を分解してくれる効果もありますが、この珪藻土は左官塗りや塗り仕上げが多く、工期やコストの問題もあります。

老人施設の療養室例(町田ミオ・ファミリア:設計:アトリエ4A)
<老人施設の療養室例(町田ミオ・ファミリア:設計:アトリエ4A)>

そこでこの珪藻土をボードにし貼るパネル(写真例)や、クロスにラミネート加工した壁紙などもあります。空気が籠りやすい地下室や、湿度に敏感なヴァイオリンなどの楽器を保管するスタジオや美術館の湿気対策や、においのこもりやすい病院や老人施設などにも効果的です。特にコロナ対策として、最近は光触媒による抗菌塗材も開発されていて床、壁、天井カーテンなどに全面塗装することで抗菌効果もあり、現在医療施設に限られている紫外線照射抗菌機器も家庭用として市販されることが期待されます。

2 住まいも医療施設も同じ

阪神大震災での本当の怖さは破壊の中の物質?

阪神大震災での破壊の凄まじさ(写真:天野彰)
<左:阪神大震災での破壊の凄まじさ(写真:天野彰) 右:阪神大震災を3カ月で著した見聞録「地震にかつ家 負ける家(著書:天野彰)>

感染拡大の中この1月17日、一瞬にして「窒息死」や「圧死」「頭部や内臓などの損傷」「焼死」など5463人、関連死を含めると6000余人もの人を亡くしたあの阪神淡路大地震から26年となりました。その日の朝大阪の療養施設の点現場の為、私は奇遇にも関西空港降り立ったのです。羽田では大阪に大きな地震があったことを報道されていたのですが、関西空港は機能していたのです。

しかし、その直後長大な蒲鉾のようなターミナルビルのチュウブフレームの向こう側から轟音とともに揺れが迫って来て,搭乗案内のサインボードが激しく揺れ恐怖を感じたほどです。驚きはターミナルを出た時でした。タクシー乗り場から人が溢れ二階のデッキまで迫っているのです。空港島までの3.75キロの連絡橋の鉄道やバスが停止され渡る望みがタクシーのみとなっていたからです。恐る恐る乗って対岸の泉佐野側にたどり着いたのが午後となりました。

神戸側と電話が通じず、思いきってそのまま被災地の見舞いにと思いタクシーを走らせて行けるところまで行こうとしたのですが、途中の2号線が渋滞し救助の邪魔になると判断して引き返したのです。その西宮口辺り情景はまるで幻影のごとくでしたが、あの破壊と乾いた粉塵の臭いだけは今も鮮明に覚えているのです。今思えばあの中に多くのアスベストもあったと思うとぞっとします。その後の被災地調査でもこのアスベストは断熱材や耐火被覆などとして多く使われていました。解体作業にマスク無しで対応されていた人も多かったのが気になりました。

その破壊された中に多くの病院や療養施設が多くあったことにショックを受けたのです。

療養の空間も住環境づくりの心で!

わが国の「医」と「療」すなわち医療施設の建物づくりは安全はもとより、清潔安心が重要です。「医」は医学的診断と処置であり、「療」は治療、療養のための看護介護となっています。その設計コンセプトは、診断・処置は作業場で医科学的な分析や調剤であり、手術室に至ってはまさに手術“場”で無菌の調理場のようであり合理的かつ機能的な設計となります。しかし肝心の療養の部屋である病室はベッドが整然と並び、そこに横たわる患者はパイプや配線で結束された“部品”のように置かれているようなのです。

このことは老人施設においても同じで、ベッドをあまり感じさせない療養空間はあまり見たことがありません。この「医」と「療」の両者を結ぶ“作業者”側の動線や管理部門はまさに機能優先のバックヤードで、整然とつながり、患者との接点である診察室は机と診療代が置かれた殺風景なものが多く取調室的感覚となりやすいのです。そして病棟(この名のとおり「病」と言う名の棟)のナースセンターは現場事務所であり、そこは患者のデータが集中し、作業日報などを記録する作業場や資料置き場となり、肝心の患者とは各病室(これも「病」と言う名の部屋)とはナースコールと言うリモートで接続されているのです。

これが病院建築の設計コンセプトで、療養型病院や老人施設などその名が異なるだけで病院・病棟・病室なのです。療養の居住の本質を考慮したデザインではなく“病”を覆い隠すデザインともとれるのです。最近のモダンな医療施設はガラスやステンレスなどが多用され、患者や老人のデリケートな心理や居住環境についての考慮があまりなされているようには思えないのです。

設計者が患者の意見を直接聞くこともなく、医師や看護師あるいは管理者の意見ばかり聞くためにどうしてもこうなるのです。このことは自分自身が病にかかってそこに寝泊まりをするとよく分かります。その患者の目で見ると感じ方の違いに驚きます。凝ってデザインされた色彩も吐きそうで、ガラスやステンレスは見るだけで寒気が起こるのです。トイレの寒さに身震いしたりクロスやペンキの臭いにむせたり、ナースコールの大きな声にびっくりし、蛍光灯の眩しい明かりに憂うつになるのです。

居住を優先すると風通しと通気が見えて来る。

住まいをイメージした療養施設(石岡ゆうゆう 設計アトリエ4A)
<住まいをイメージした療養施設(石岡ゆうゆう 設計アトリエ4A)>

新しい病院ほど、見かけはホールや待合室はまるでホテルのロビーのようになっていますが、そこにはアットホームな優しさがないのです。さらなる医療費削減の中で、医療の施設はまさに防災上も耐久性も、芯までの素材も合成素材でぎりぎりの営利が目的のローコストなデザイナーズマンションやビジネスホテルのようになっているようです。そんな中で患者はおろか長時間働く医療従事者の健康さえ危ぶまれるのです。

新しい病院ほど近代的なデザイナーズマンションやビジネスホテルのようになっていますがそこにはアットホームな優しさがないのです。実はこの発想こそ住まいの設計にするのです。病院の設計するためには一度病気をすると良い?ようなのですが、そうはできません。実はこれこそその想像をし仮想することです。実はこの想像力こそ家づくりにも発揮するのです。

3 想像と仮想で健康な住まい?!

住まいの設計とは創造ではなく、想像し仮想することなのです。その空間づくりもデザインではなく住む人の生活を想像することで自然に生まれてくるものです。実はこの“想像力”こそ、家づくりの設計に発揮するのです。家を設計し造る側としてではなく、住む側として考える。当たり前のようですがどうしても設計者は専門の立場から構造やデザインさらに法制限を優先し、その外観にも固執してしまうのです。しかし大切なことはその間取りはもちろんそこに住んでみて陽当たりや騒音、周囲の視線までに想像を巡らすのです。

私自身実際に敷地にテントを張り一昼夜居たこともあるのです。するとその土地の風の流れや人通り、遠くの騒音やトラックの振動まで気になったこともあるのです。

イラスト:敷地に住んでみる?!(画:天野彰)
<イラスト:敷地に住んでみる?!(画:天野彰)>

そこに住む家族の1人1人の身になってみること。つまり妻の側そして夫の側となってみると生活や過ごす時間差などがまったく違うことも見えてくるのです。まさに仮想の世界ですが、これこそがバーチャルな設計手法と言えるのです。

そこで健康に大切な風通しと見通しが見えて来る

寝室や子ども部屋は個室で密室です。そこに長時間居ることになり酸欠やシックハウス症候群となり危険です。特に昨今はウイルスの排出にも不利で、寒くても家中に風を通し換気をすることがなによりも重要です。部屋の物を整理し “対角に位置する”位置の窓やドアから空気を排出するように少し開けて、防犯の為に市販の窓ドアストッパーなどでロックするのです。

イラスト:集合住宅の風通し(画:天野彰)
<イラスト:集合住宅の風通し(画:天野彰)>

しかし集合住宅など都合よく窓が無く、両方を開けることが無理な場合、台所や浴室トイレなどの強力な換気扇で常時排気にして反対の遠い方の換気扇を止めて給気にするのです。寒いときは寝室や居るところだけスポット暖房と加湿に努めるのです。さらに部屋の空気を換気しながら冷暖房するエアコンや、部屋の温度を保ちながら換気するロスナイなどの換気装置も考えるのです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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