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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 同居は少子高齢化を救えるか?メリットとデメリット

1 社会構造が変わり三世帯から二世帯へ、そして核家族化の現在

中国に「四世堂同」と言う、同じ屋根の下に親子孫ひ孫と四世代が仲良く住んで行くと言う幸せ長寿命、家庭円満の故事があります。まさしく「亀は万年、鶴は千年」の例えです。もともとわが国も三世代同居と言う同居が当たり前だった家から突如二世帯住宅などと言う概念が生まれ、親子夫婦が1.2階で別れて住もうと言うもので流行ったものです。しかしそののち同じ屋根の下で親子がまるで他人のように住むためにいろいろな不都合も生まれたのです。確かに同居は封建的な家族主義でもあり不自由なこともありました。しかし子育てや老人介護には不安がなかったのです。

現代からすれば四世堂同のごとく安心な住まいでもあったのかも知れません。しかし次第に社会構造が変わり職場が変わり、核家族化が進み、共働き世帯も増え、急速なコンビニ社会で若者たちの結婚願望が薄れ、独身世帯が増え、既婚世帯も保育や養育困難から、ますます少子家庭が加速しているのです。一方高齢者は医療が進み長寿化が加速され高齢者世帯、独居老人世帯も増えているのです。

「独立した親の生活」と勝手な「庭付き子世帯」
独立した親の生活と勝手な庭付き子世帯(画 天野彰)

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同居が見直される中、親世帯・子世帯が双方満足する「同居」の住まいとは

こんな少子高齢化社会において今改めて同居が見直されていると言うのです。まことに都合のいいような話のようですが、実は時代は変わり嫁姑の封建的な思想も遠のき、しかも親も子も大人となり在宅医療やケアのサービスも受けられ加えて年金不安も募り、老いてわが家で老後を願う親も増えたのです。一方の子側も、保育困難と不安から職場から多少遠くても親の家から通い実の親に見てもらえればと願うのです。

こうしてかつて当たり前であった親子同居のメリットが改めて浮上しているのですが、実はデメリットも取りざたされているのです。互いが勝手に住める気ままな独立生活と、子側の経済や孫に翻弄されたり、親に子育てなど干渉されることなく生活できるかと言うことです。互いが勝手なニーズを求めているようなのですが、実はこの問題さえ解決すればかつての二世帯住宅のような冷たい親子関係にもならず、安心で楽しい同居生活も可能なのです。

2 同居は安心なのか?

先日(2017/10/26)NHKラジオ先読み夕方ニュースにて、シリーズ「シルバー世代の快適住まい」で、積極的な親子共働の同居こそ、親子とわが身を救う!と言うお話しをしました。やはりアナウンサーの畠山智之さんから嫁姑の問題はと、質問されましたが、それは古いころのお話しで、「今はむしろ姑の方が嫁や娘に気をつかっているのでは?」と答えたのです。

これにはリスナーからも賛同の意見を寄せられたようです。確かに現代は暮らしもよくなり、その分嫁や娘が共働きで忙しく保育所などの問題で悩む若い夫婦が多いのです。この点においては親の方も少子化に憂慮があり理解も多いのです。さらにかつてに比べ親も長生きで元気もあり、何か応援をしてやりたいと言う気持ちもあるようです。

親世帯は変わりゆく世の中に暮らす子世帯の将来を不安に思う

一方で勝手気ままで核家族で慣れた親夫婦も老々介護の不安を抱える親たちも多いのです。いくら土地や建物があっても、豊かな老いの生活を送るためにはなによりもいつまで元気でいられるか、いざとなると施設に入るのも金銭や覚悟がいるのです。第一いったいいつまで生きるのか、それよりもいつまで認知ができるのか?などさらなる不安が絶えないのです。やはり近くに親しい人が居ることが何よりだとホンネで思っているのです。

少子高齢化に不安がつきない親世帯と子世帯の実情

実は…現代の職場の問題から放れて暮らす子夫婦の側も、子育てはおろか、各々の両親が高齢となり、4人の親のことを案じているのです。実際に互いの親の事情を気遣い、常に不安を持って暮しているのです。さらに実生活の中では教育費に加え、何よりも法外な家賃やローンの支払いに苦しんでいるのです。

これは子を思う親の方にも大きな心配の種でもあるのです。現実の少子高齢化社会とはこうした不条理を言うのです。実際にはこれにあてこんで都市部では高層マンションを建て、賃貸住宅を建て、グループホームのようなものを次々とつくり、なにやらこれで良さそうに思えるのですが、実際には保育所も小中学生の課外生活の対処もなく、保育士や介護ケアの人材確保もなくその優遇さえなされていないのです。

今を暮らす単世帯を手に入れるか、将来を考え新しい同居=共働の家とするか

この不条理に、人々は色形のイメージだけに囚われホンネで“生きて行くための家や老後に工夫したリフォームもせずただひたすらメーカーなどの既成のプランに甘んじ高額を叩いているようです。一方の政治家や行政はまるで選挙のための市民寄りのスローガンと、根本的な解決策もなく事なかれ主義を貫いているようなのです。そして今、人も家も都市も確実に老いて疲弊しているのです。

そんな中で、今あえて同居を再考し、助け合い老若共働の新しい同居の家づくり」をしている家族もいるのです。あえて職場を変え、職住近接を画策し親元に帰り、兄弟夫婦そろって親と暮らす共働の住宅をつくっているのです。

向こうが息子夫婦母の家、デッキを挟んで手前が姉夫婦の家(天野彰)
T様邸 向こうが息子夫婦母の家、デッキを挟んで手前が姉夫婦の家(天野彰)

3 親子兄弟、孫、夫婦にも距離がある?

同居すること、親子が一緒に暮らしをすることなどの当たり前のことが今の社会では大きく変わって来ていることを痛感します。もともと農家や工場など職住近接が当たり前の社会から、今日のように都市集中、さらには企業体集約のサラリーマン社会では親の郷里を離れた核家族化が浸透し、子どもの教育優先で転勤なども夫の単身赴任とますます家族はバラバラになっているのです。

合理的な親子、夫婦の“生活距離”を持ったS様邸(設計:アトリエ・フォア・エイ)
合理的な親子 夫婦の生活距離を持ったS様邸(設計 アトリエ・フォア・エイ)>

少子高齢化は生活だけの問題でなく、所有者不明の土地を作り出している

この親子の核家族化は何十年も前から当然のことと予想され、それに合わせた交通網の整備などによって働く場所も親から距離はますます遠くなり、コンビニエンス・ストアやランドリーなど急激に便利となり、メディアやネットも発展し、若者の独身化が進み少子化はますます進んでいるのです。一方、親の側もそこそこの年金と介護ケアサービスも受けられ、ケアハウスやグループホームなどの安住の地?も期待されているのです。

しかし今、思わぬスピードで高寿命・少子高齢化が進み(これも予測通りなのだが・・・)今頃になって年金支給や医療負担の不安や税金、共働き世帯では保育施設の不足に混とんとし、さらに安価な介護施設の入所待ちやケアの質の問題もあり、老々介護やむなしと言う高齢世帯が増え、やがて不安な独居老人となり一気に空き家、空き地が増え、それらや山地を合計すると九州かあるいは北海道ほどの巨大な総面積の所有者不明の土地となっていると言う。

これからの同居のポイントは親子の距離感

これは国家的なゆいしき問題だが、今後の行政不安に、老いも若きも自衛せざるを得ないと感じているのです。そこで親の家の“同居”がどちらかともなく思考されているようです。確かにもともと儒教思想のわが国での家族観は核家族化の不合理を親子とも心の奥底で感じているのかも知れません。実際に住宅設計の現場ではこうした親子の想いが大きく感ぜられるものです。

今この時代の子育ての不条理、親を思う子の心情とかつての嫁姑問題など古い困惑とは違い、むしろ互いの家族の尊重と、親と子、夫婦その妻と夫との確立が重要な時代となっているのです。こうして家族の個室化は進み、各個の本質的なプライバシーの確保とその保護のため、プランは自在にかつタイトにしながら合理的な同居のメリットを生み出す。夫婦そして親子の生活距離が重要となるのです。

家の中の距離感玄関・キッチン・浴室・個室のパターン
家の中の距離感 玄関・キッチン・浴室・個室のパターン(図 天野彰)

気ままに「独立した親の生活」と勝手な「庭付き子世帯」
気ままに独立した親の生活と勝手な庭付き子世帯(図 天野彰)

そのヒントに玄関、互いのキッチン、自由に入れる浴室、互いの寝る場の距離が重要なのです。その親子四人の一人でも違和感がある場合には、同居・近居・遠居の家の段階距離が重要となるのです。

4 表題からやりくりからくりどんでんがえし?少子高齢化を救う?同居の手法

親と子と孫の居場所をやりくりしてつくり出すことが重要

やりくりとは同居の親のスペースと子のスペースの位置と広さの平面的な間取りの取り決めで、これにキッチンやトイレ浴室子であり孫の居場所や部屋の位置が重要となるのです。こうした建築的な空間のやりくりに加え、食事やトイレはもとより入浴のタイミング、寝る時間など親のサイクルをよく考え、互いが遠慮したり、気を使わないように工夫し、どちらかが小さくとも2つのキッチン、浴室などを設ける。そして体力の相違から寝る場所はもとより、くつろげる場所も狭くとも2つに仕切るなどの工夫が必要なのです。親子だからそんなに気を使うのもおかしいのではと思われそうですが、考えてみれば例え夫婦と言えども寝る時間やエアコンなどの温度差があるのです。まして親子と言えども子夫婦の一人は婿か嫁であることを考える。まさのここでも、空間・時間・人間のやりくりが必要となるのです。

やりくりからくりどんでん返しドア一枚で上下二つの家 H様邸(画:天野彰)
やりくりからくりどんでん返しドア一枚で上下2つの家 H様邸(画 天野彰)

空間に可変性を持たせることで、現在そして将来の独自の空間の使い方ができる

では、同居のからくりとは?これも空間のやりくりを時間と人間で上手に行うからくりのことです。所詮狭いスペース、これを小刻みに壁で仕切るのではさらに狭苦しくなります。この矛盾を解決するからくりとは、空間の可変で解決するのです。今まで2つだった団らんスペースは大きな引き戸で時に一体に、親のスペースと子のスペースの間に鍵のかかるドアを一枚設けて、その開閉で一体同居、時に完全分離の家に使い分けることです。

どんでん返しとはどう言うこと?

この同居の本来の姿と言えるのです。親のスペースは将来の子夫婦の家となるのです。そして子夫婦のスペースは孫たちが住むかもわかりません。あるいはアパートとして人に貸すこともできます。実際に子の側が転勤などで地方に引っ越した後、先のドアに鍵をかけて、人に貸すこともできるのです。これが同居のやりくりからくりどんでんかえしなのです。

同居住宅T様邸の外観
階段のドア枚で二つの家にT様邸(設計:天野彰)

T様邸 1階親の和テイストの空間
T様邸 1階親の和テイストの空間(設計:天野彰)

やりくりからくりどんでん返しドア一枚で上下二つの家 H様邸(画:天野彰)
T様邸 2階子夫婦の勾配天井の空間(設計 天野彰)

5 現代の親・子が抱える不安を解消するには人と家族の接し方を見直すこと

世の中は、ネットだAIだとかで人々はあまり自分の暮らしに工夫をしなくなったような気もします。そしていきなり介護だとか施設への移住などを心配するのです。人生100歳と言われている世です。長い老後を元気で老後を生きて行くかを考えるのです。もっと楽しく豊かに生きるのです。そのためには年金だけに頼らない糧と人との対話が大切です。何でも相談できて、本音を聞いてくれる相手が必要なのです。

同じことが子育てにも必要なのです。共稼ぎなどと言う言語が不要の夫婦の社会進出に伴い、ますます子育てが多難で注意を要する時代となったのです。取り合えずは預かってもらえるだけで安心の保育施設から共に育っていく関係が重要なのです。もっと親子が触れ合えて願わくば兄弟がもう一人増えるなどが理想なのです。

新しい同居としての一部賃貸住宅として貸し出す「契約同居」が有効的

親の側から見た子 (孫)の変化やその成長過程は一瞬のうちに見逃してしまいがちなのです。そうです。親子夫婦「個」の確立をしながらもあえて「家族」が重要なのです。親が近くにいることは子夫婦の側からはあたり前のことですが、独居老人や子どもが居ない夫婦も含め、あえて同居を私は提案しているのですと言っても、本当 の同居ではありません。家屋敷を建て替え、あるいは簡単リフォームして、イラストの断面のような賃貸アパート併用の家にするのです。 間取り的には二世帯住宅に似ていますが、下の階や一部を貸すことで老後の糧にするのです。

お馴染み「減築」で2DK2戸との「庭付き契約同居」(画:天野彰)
お馴染み「減築」で2DK2戸との「庭付き契約同居」(画 天野彰)

しかし、従来のアパートと異なります。賃貸契約の仕方と住まい方が全く違うのです。たとえば近辺の家賃相場の半分近くにするかわりにちょっとした条件をつけるのです。各アパートにベルを付け、家主の緊急時には救出や通報を頼む。あるいは庭の草取りや買い物を頼むなどです。反対に元気なうちはイザという時には子どもを預かったり、注意を払ったりもできるのです。そう、まるで本当の親子同居のような関係を築くのです。これを私は「契約同居」などと言っているのです。そのため、契約時には本人と直接面接したり、その両親などに保証を願うなど賃貸契約と言うよりもまさしく「同居契約」をするようなものです。

私の事務所では、子どもが居なくても同居が可能となるこうしたプランづくりをお手伝いさせていただき、すでに多くの親子方に喜んでいただいているのです。

「契約同居」のKさんだが、すでに娘さん夫婦も同居(設計:アトリエ4A)
「契約同居」のKさんだが、すでに娘さん夫婦も同居(設計:アトリエ4A

六十歳から家を建てる(拙著:天野彰)
六十歳から家を建てる(拙著 天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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