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LDKは炉辺?!それが住まいの原点?~住まいの本当のお話し
1 LDKは炉辺?!それが住まいの原点?
ジャンボテ―ブルキッチンなどと言うキッチンをご存知でしょうか?少子高齢化が進み超高齢化の世の中となると、Kすなわち台所はもっともっと住まいの中心となって行くことでしょう。もともと台所の片隅に有ったキッチンは子育てと共に対面式キッチンとなって、今度はリビングの方にまで出て来て家族みんなの調理台のようになり、さらにこのキッチンは大きなテーブルと一体となり、家族団らんのジャンボテーブルとなっているのです。
リビングに家族が集まるジャンボテーブル(画:天野彰)
考えてみれば人類創始の住まいは洞穴か、竪穴の小屋でその真ん中に薪の炉があってその周りに家族が集まりその端で寝起きしたものです。そこでは暖を取るだけではなく煮炊きをしながら焼き物も行い、家族のほとんどの食事を賄ったキッチンでもあったのです。皮肉にも現代、子育てが終わり子どもたちが出て行った夫婦だけの家ではこのキッチンが住まいの中心となってまさに炉辺化しているのです。
事実、夫も見送り「おひとりさま」となった主婦は既にこの炉辺キッチンで腕を振るい毎日楽しく暮らしている人も多いのです。そればかりか友達を呼んだり呼ばれたりして互いのジャンボテーブルに集まって料理を学びながらつくり、一緒に食べるなど家族を超えた一種のコミューンのような新たなキッチンスタイルとなっているのです。それが開かれたキッチン、開かれたLDKとなるのです。
おひとりさまテーブルキッチン・アイランド 写真:アイランド式テーブルキッチン(画:天野彰)
リビングは丁度ホテルのロビーか図書館の閲覧室のように開放し、まさに社交の場所でもあるのです。このテーブルこそ、まさしく子育ての世代には家族みんなの学習机であり、子育てが終わった後はこうした“社交のテーブル”ともなるのです。
「こんな楽しいテーブルならもっと早くにしとけば良かった!」とは、老いて「おひとりさま」となられた主婦の言葉です。
2 身も建物も湿気が怖い?
高気密高断熱の壁の家の本当のメリットとはいったい何でしょう?
その一つが冬暖かいことでしょう。さらに夏はクーラーがよく効くと言うことで、そのため消費電力が、少なくて済むと言うことでしょうが、ここで注意することは、よく“騙される”のは時間当たりの消費電力とか朝から晩までの点けっぱなしの場合の電力量などを比較対照にすることです。問題は夏の現実的な生活です。
実際クーラーを限って言えば真夏の一時期を除いてクーラーを着けっ放しにするのはいったいどのくらいの間でしょう?熱帯夜が続き話題になるような異常気象の夏はともかく、夜じゅうクーラーを着けて寝るのはひと夏で多くて10日から20日間ほどです。しかも高齢化が進んでクーラーを着ける時間もだんだん短くなり、窓を少し開けて寝る人も多いのです。昼でも奥さん一人でクーラーを着けっ放しにするなど考えられないのです。この事実から極端な冷房ロスを云々することはあまり現実的ではないのです。
いくら断熱が良くても窓が小さくて風の通りの悪い家は夏蒸れて暑苦しくなります。むしろ冷房よりも扇風機で熱くなった空気を追い出した方が涼しいし、西日のあたる壁側に蔦(つた)でも生やして日陰をつくる方がうんと得策です。では冬の暖房ですが、これも住まいの施工の気密精度と高断熱とは別物なのです。たとえば障子をきっちり閉めていてすっと開けるとびっくりするほど寒くなります。たった一枚の紙なのに、なんと“断熱効果”があることでしょう!この原理こそが断熱で、要は空気層をつくり隙間を無くすように施工の精度を上げることが重要です。
本の家は通気の良い傘の家 くまで風通しを優先した町家プラン(画:天野彰)
最近話題になっているのは外断熱です。普通の断熱とは壁の内側にグラスウールや発砲樹脂板などの断熱材を充填させるのですが、それとどこが違うかと言うと、外断熱は薄着の上にミンクや毛皮のコートを羽織ったようなものと例えればよいでしょう。その反対に従来の断熱とはまさにらくだの下着を着て内側の熱を逃がさず上着を着るようなものです。そうです。毛皮の外断熱も中身が薄着のモンロー1人なら暖かそうで格好も色っぽいのですが、残念ながら家は広く家族が大勢いて、暑がりや冷房ダメの年寄りが居たり、さらに家族はバラバラで昼間家に誰も居ないなどと言うように家全体をコントロールはできないのです。
結局、各部屋個別の冷暖房と断熱をする方がよさそうです。さらに問題となるのは断熱材が外にあっても中にあっても、気密性を高くするとどうしても壁の中に結露することです。これを壁内結露と言い、特に浴室回りや暖房が効いた北壁側の壁内にこの結露が起こりやすくなり、この壁内結露は誰にも見えないだけに人にとっても建物にとってもとても恐ろしいことなのです。
そのことから私は白川郷の合掌造りなど、古来日本の家の合理性を感じるのです。まさに屋根は分厚い藁葺きで、その内側はほぼ無仕上げで、状態を見やすくし、しかも真冬でさえ妻側の障子を開け閉めして、通気を心がけ、つとに“湿気を逃す”工夫をしていたことに驚かされます。
白川郷合掌造り 冬でも妻側から通気(天野彰)
さて明けて、日本らしい“開放的な私たちの家”を創造したいものです。
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